• 18/05/2022
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アクセンチュア新組織のリーダーが語るクラウドの未来と働き方2つのルール

常に新しい取り組みを推進しているアクセンチュア。昨年末にクラウド組織の大改革を実施しました。そこで生まれた新チームがインテリジェント クラウド イネーブラー(Intelligent Cloud Enabler)グループ、通称『ICE(アイス)』です。

組織のリーダーに就任したのは、マネジング・ディレクターの安元直子さん。アクセンチュア歴18年のベテランで、二児の母でもあります。

新組織『ICE』が担う役割、そして、クラウドの未来といったリーダーとしてのミッションに加えて、アクセンチュアで長く働いているからこそ感じる仕事観の変化や多様性への取り組みについて伺いました。

『ICE』が目指すクラウド・インフラのワンストップサービス

――クラウドは、ERP(統合基幹業務システム)やCRM(顧客管理システム)をはじめとして、さまざまなビジネスツールを連携しエコシステムを構築するプラットフォームです。

アクセンチュアのなかでもさらに重要度は高まっており、昨年末にはクラウド組織を刷新。新組織『ICE』を立ち上げました。安元さんはこの『ICE』のチームを率いるマネジング・ディレクターですが、組織の概要と目的を教えてください。

安元さん(以下、安元):まず、アクセンチュアのミッションは、お客様のDX(デジタルトランスフォーメーション)を現実のものにして、スピード感のあるビジネスを可能にすること。クラウドはそれを実現するひとつのピースです。しかし非常に重要なピースです。

これまでのインフラ領域は、業務に近いレイヤーであるアプリケーション領域と比較すれば地味な印象があったかもしれません。しかし、もはや、アプリケーションを下支えするものを超えた非常に重要な存在となっています。

ICEはこのクラウド・インフラ領域において、「コンサルティング」、「エンジニアリング」、「アーキテクティング」という3つの立ち位置で価値を提供する組織です。

そういった意味では、新組織を立ち上げることで、アクセンチュアのクラウド・インフラにおけるさらなる本気度を社内外に示し、プレゼンスを向上する役割も担います。

――「コンサルティング」、「エンジニアリング」、「アーキテクティング」という立ち位置とのことですが、『ICE』は、アクセンチュアにおけるクラウド・インフラのワンストップサービスを提供するのでしょうか。

安元:はい、組織横断型のチームになります。クラウド・インフラ領域といったらまずはICE、という考えの定着化を進めています。

もちろん、ICEだけですべてのクラウド価値を提供できるわけではありません。データ設計やクラウド運用のチームなど、他のチームと連携しながらサービスを提供しています。

――クラウド・インフラ領域を手掛ける上で、どういった独自性や新しさがありますか。

安元:ICEは『エンタープライズ・インフラストラクチャ・トランスフォーメーション』『クラウドマイグレーション&モダナイゼーション』『SAP on Cloud』『サービス・リライアビリティ・エンジニアリング(SRE)』『ハイブリッド&エマージング プラットフォーム』『セキュリティ』『クラウド・ネイティブ・ソリューションズ』という7つのサブチームから構成されています。

そのなかでも『ハイブリッド&エマージング プラットフォーム』は、ICEの立ち上がりにあわせて人を集め、サブチームとして組成したという点で新しいですね。

お客様の多くは特定のクラウド企業に依存するのではなく、MicrosoftのAzureやAmazonのAWS、GoogleのGoogle Cloud Platform(GCP)、さらには、自社施設で管理するオンプレミスなどを組み合わせた“いいとこ取り”を検討しています。

そのようなハイブリッドかつマルチクラウド環境を狙うお客様に向けては、ハイブリッド・マルチ対応の運用管理基盤に加え、コンテナ管理プラットフォームをご提案しています。

コンテナ管理プラットフォームについてはオープンソースも含めさまざまありますが、お客様の現在の状況、課題認識を共に整理し、目指す姿を共に描いて適切なソリューションを見極め導入するのが『ハイブリッド&エマージング プラットフォーム』チームです。

私たちは、複雑なビジネス課題を、どういった順序でどう解決するかをお客様に寄り添いながら考え、実現する組織です。より多く、より柔軟な選択肢をお客様に提供するという観点で、今後実績を重ねながらフォーカスしていきたい領域です。

――企業が求めるクラウド活用が高度化していくなか、『ICE』の強み、目指す組織像をどうお考えですか。

安元:アクセンチュアは、ICE設立以前からもクラウド・インフラ領域に力を入れていました。ひとつのシステムの動作プラットフォームとしての狭いクラウド・インフラの設計構築に閉じず、全社共通インフラとしての広いクラウド・インフラをスコープとした案件実績も豊富です。

また、設計構築だけではなく、前後に伴うクラウド戦略策定、標準整備などのコンサルティングから運用に至る一連のフェーズにおいて、グローバルでサービスを提供しています。これらを通じて蓄積されたノウハウがあります。

そして、今ワンストップでクラウド・インフラに携わるICEが設立されたことで、経験がさらに集約されるはず。これは、私たちの大きな強みになるでしょう。

社内外で「クラウドといえば、ICE」と言われるようにしていきたいですし、「ICEで経験値を上げたい」という人材が集まるようにしたいですね。

グローバル案件の経験や複数ベンダーとの協業でスキルを磨く

――『ICE』は、クラウド・インフラを担う人材を育てるチームでもあるわけですね。

安元:おっしゃる通りです。まずは即戦力でなくても幅広く参画してもらい、これまでの経験を生かしつつクラウドエンジニアとして成長してもらう構想を立てており、転職者向けには充実したトレーニングも用意しています。

結局、アクセンチュアにとっての最大の資産は人であり、優秀な人材によってビジネスが成り立っています。クラウドは、瞬発的に進化している領域。習得した知識は油断するとすぐに陳腐化します。そういった変化に追従するためにも、個人の学ぶ姿勢とチームによるトレーニングの提供は非常に重要。座学とハンズオントレーニングの組み合わせで、クラウド未経験者も巻き込みながらワンチームとしてICEを強化していきます。

――クラウド未経験者でも成長できるとのことですが、適性などはありますか。

安元:ベーシックな部分と技術的な部分に分けてお話しします。

ベーシックな部分とは、アクセンチュア全部門に通じる適性のことです。自発的に行動できる、論理的思考ができる、効果的なコミュニケーションがとれるなどです。

技術面で言えば、オンプレミスのシステムをクラウドに移行する案件も多いので、クラウドの実務経験がなくても、企業内での大規模ネットワーク構築や刷新、統廃合などの経験は役立ちます。また、拠点で利用されるパソコンなどの集中管理ソリューションに携わっていた経験も価値があるでしょう。

――実際に『ICE』で働くと、どういった成長ができますか。

安元:実務で得られる経験もICEで働くメリットです。アクセンチュアは自社でIT製品を持っておらず、その時々でお客様の課題解決に最適なソリューションを選択しています。

クラウドでも、Amazon、Microsoft、GoogleやOracleなど、さまざまなベンダーのソリューションを採用するため、特定のベンダー製品・ソリューションに縛られない幅広い経験を積むことができるでしょう。

また、グローバルな案件に参画し、世界中のオフィスの同僚とともにプロジェクトを遂行する機会も少なくありません。


   アクセンチュア新組織のリーダーが語るクラウドの未来と働き方2つのルール

例えば、米国のアクセンチュア案件で、大手製造業のお客様が全世界に有する13のデータセンターをすべてクラウドに移行する案件があったのですが、日本からもICEでクラウド移行を専門に担うメンバーが本プロジェクトに参画しました。

この案件は全社的に注目を浴びる事例となり、その後同じような案件が発生した際にも、各国のアクセンチュアから、「あの案件に携わったメンバーを連れてきてくれ」と依頼されるようになっています。

産休から復帰時の居心地の悪さは、今のアクセンチュアには存在しない

――安元さんは『ICE』の日本統括。組織統括を行いながら、案件のデリバリーにも携わっています。そういった役職につくまで、アクセンチュア入社後は、どういったキャリアを歩まれたのでしょうか。

安元:新卒で入社したハードウェアベンダーを半年で退社して、2004年、第二新卒としてコンサルタント職で入社しました。若手時代に関わったのは、通信事業領域のお客様の案件。しかし、コンサルタントというより、いわゆるSI(システムインテグレーション)の仕事の方が多かったですね。

これまでのキャリアを振り返っても、コンサルティング3割、SIにおける実行部隊やアーキテクトとしての仕事が7割といった感じです。お客様は業界横断的に、保険業、半導体製造業、化学総合商社などさまざまです。

――入社から18年が経ちました。入社当時は今ほど、多様性や女性活躍の重要性が周知されていなかったと思いますが、変化を感じることはありますか。

安元:もともと、女性が働きにくい会社だと感じたことはありません。昔から、等しくアウトプットを求められ、アウトプットに応じて等しく評価される会社です。

ただ、第一子を妊娠したときには、少ししんどいな、と感じたこともありました。子どもができて初めて気づいたのですが、当時自分がロールモデルとして見ていた方々は、皆さん男性だったんです。もし、ここで休んだらキャリアはどうなるのか、そのときはあまり相談できる人がいなかった。

実際、当時、私が所属していた部署で産休から復帰したのは、私が初めてだったんです。当初すごく気を遣われていて、居心地の悪さも感じました。でも今は前例も増え、育児に関連した支援制度やサポートも充実し、産後に安心して戻る選択ができる会社になったと感じます。

――2015年から取り組んでいるアクセンチュアの働き方改革『Project PRIDE』も大きく関係しているのかもしれませんね。ビジネスコンサルティングで培った手法に基づき「制度」と「意識」の両輪から施策を重ねている組織風土改革だと伺いました。

離職率は実施前の約半分に低下。女性活躍では、女性比率も22.1%から36.5%へ増加しています(2021年9月時点)。

安元:女性というキーワードでは、昨年、テクノロジー部門全体で、女性向けのネットワーキング活動を行いました。しかし、現場の声を聞くと、ジェンダーの悩みよりも働く親として子どもがいるなかでの在宅勤務など、女性に限らない悩みのほうが多くなっている印象です。

実際、女性だけのネットワーキング活動ではなく、男性も含めたペアレンツの会として活動しているという事例もありました。

会社として、女性の働きやすさは大前提で、それを超えたステージに進んでいると感じます。もはや、私が感じた産休復帰後の居心地の悪さなど、存在しなくなっていますね。

何があってもポジティブに。風通しがいい組織風土を心掛ける

――今は8歳と6歳、2人のお子さんの母親、そして、『ICE』の日本統括兼マネジング・ディレクター。忙しい毎日のなか、うまくバランスを取ってやりきる秘訣などがあれば教えてください。

安元:基本的なスタンスとしては、頼れるものにはすべて頼る。もともと、自分は子育てと家事と仕事、すべてにおいて100点満点は無理だと考えているので、はじめからある程度、家事を諦めています。

子どもには、ひどい話ですが「お母さんはできないことも多いから、あんまり期待しないで」と話していますから(笑)。

具体的には、家事代行や料理代行のサービスは活用しています。子どもの送迎サービスも、いつでも使えるようにユーザー登録だけはすませています。

あとは、最新機器にも頼っていますね。コロナ禍で在宅勤務になったのを機に、スマートホーム化にハマりました。朝になったら自動でカーテンが開いたり、設定温度になったらエアコンが起動したり、決まった時間になったら電気が点いたり。気づいたら、デバイスが22個まで増えていました。

――サービスの活用は、ある意味で家事のアウトソーシングですね。スマート化も、ひとつひとつはちょっとしたことでも、積み重なれば時短になります。

安元:プライベートでも課題を効率的に解決しているんです。そして少し楽しい(笑)。

――プライベート、仕事を問わず、なにか自分のなかで決めているルールはありますか。

安元:仕事で気をつけていることは二つ。ひとつは、何ごとも他責にしないこと。

自分がメインで関わっていないプロジェクトが上手くいっていないとき、関係ないと言い訳するのは簡単です。しかし、自分がそこで何かアクションすることで、状況は変わっていたかもしれません。そんな後悔をしないためにも、物事がうまくいっていないように見える時には、常に自分は何ができるのかを考えるようにしています。

もう一つは、何ごともポジティブに捉えるように心掛けています。

例えば、お客様からお叱りを受けたとします。私を担当から外したいというクレームを入れることもできるはず。でも、そうせずに、まっすぐにフィードバックをくれていると捉えれば、きちんとお叱りを受け止め、同じ失敗をしないように気をつけて次へと進めますよね。

前向きな空気づくりは、ディレクターとしても大事です。先日もシステムの本格稼働の直前に大きな課題が見つかったのですが、とりあえず場の緊張を解くことを意識しました。対応するのはそれから。気まずいことでも報告しやすくなれば、結果としてさまざまなリスクも下がります。

――最後に、今後の目標について聞かせてください。

安元:現状のミッションとして、ICEとは別に、インドとの橋渡しも担当しています。日本のアクセンチュアにとっての主要オフショア拠点は、中国、フィリピン、インド。そのなかでインド拠点と日本の協働関係は後発でまだまだ発展途上です。しかし、世界中のアクセンチュアと長い協働の歴史を持つインドのケイパビリティやノウハウには大きな価値があるので、それを日本でも最大限活用したいと考えています。

個人のキャリアの目標でいえば、職位に対する目標は決めていませんが、キャリアの方向性は見据えています。

特定の業界に特化してキャリアを積むというよりは、引き続き、業界に依らず全社横断規模のトランスフォーメーションを戦略策定から実行まで全方位的に支援するエンタープライズアーキテクトとしてキャリアを積んで、さらに上流のアジェンダが語れるようになりたいです。

最先端でグローバルなクラウド・インフラ領域で、自らのビジネススキルを高める

「クラウド・インフラ領域に本気で取り組むアクセンチュア」。そんな姿勢を社内外に示すための新組織が『ICE』です。

一見すると地味な存在に見られがちなインフラですが、安元さんのお話からは、クラウド・インフラは企業のDXの礎となる重要な領域で、グローバルと連携し最先端の知見を活用するやり甲斐のある仕事であるとわかります。

そんな組織のトップである安元さんは、さまざまな工夫でマネジング・ディレクターと子育てを両立させていますが、それを可能にする企業風土と取り組みがアクセンチュアにはあります。

そして、アクセンチュアが見据えているのは、女性支援だけに囚われない次のステージ。男女を問わず子どもを持つ親としての働きやすさを追求しています。

企業のDX、そして価値創造のプラットフォームとして、これからのビジネスに欠かせないクラウド。そのクラウド領域でスキルを積みながら、「クラウドによる価値の最大化」で企業に寄り添う。常に一歩先を見据え充実した働き方をアクセンチュアで叶えてみてはどうでしょうか。

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Photo: 島村緑