• 04/05/2022
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SNSでよく見るテレビ番組のキャプチャー画像、著作権上の問題は?

 最近、出版社に無許可で漫画を配信するサイトが物議を醸しています。以前から音楽やアニメについても同様の議論があり、コンテンツの違法配信はもはや特定のサイトに限定できる問題ではありません。

 例えば、Twitterやブログなどに、録画したテレビのGIF画像を投稿している人もいます。TVアニメ「ポプテピピック」や「恋ダンス」などは、よく見かけるように思います。実際のところ、テレビ番組の画像や動画をインターネットにアップロードするのは法的に問題ないのでしょうか?

テレビに関する著作権

 テレビ番組の著作権はどうなっているのでしょうか。NHKのWebサイトにはこう書かれています。

 つまり、テレビ番組は、制作したスタッフやドラマの原作者、出演者などによる「映画の著作物」として保護されており、その「画面や音声」をネット上に流すと著作権に抵触するというわけです。

 この「画面や音声」というのは分かりやすいようで、実は微妙な表現です。著作権法では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しています。

 例えば、「東京の適当な街並みを何の工夫もなく撮影しただけのテレビ映像」があったとしましょう。それをキャプチャーしてネット上で使用した場合、「思想や感情が創作的に表現された著作物」を流したといえるでしょうか。キャプチャーそれぞれが著作権の侵害にあたるかどうかは、議論の余地があります。

 とはいえ、わざわざアップロードされるようなシーンには、有名人が映っていたり、映像のハイライトとなる部分が含まれていたりすることが多いはず。基本的には、著作物を流していると考えてよいでしょう。

「引用」であれば問題ない

 著作物を勝手にインターネットに流すと「無断転載」となり、著作権に抵触します。

 しかし、例外的に、テレビ局などの著作権者に断らず作品を使用してよい場合がいくつかあります。報道や学校教育目的の使用もありますが、一般人の多くが利用できる形態は「引用」です。

 文化庁によれば、引用には7つの要件があり、これらを満たした場合は例外的に著作権・著作隣接権を侵害したことになりません。それぞれの要件をざっくり解説してみましょう。

1.すでに公表されている著作物であること

 そもそも一般人が、公表前の番組を入手することは困難。今回はあまり気にしなくてよい問題です。

SNSでよく見るテレビ番組のキャプチャー画像、著作権上の問題は?

2.「公正な慣行」に合致すること

 要するに、「示している他の6項目を満たし、業界のさまざまなルールにも従おう」ということ。ですが、どこまでを公正な慣行とするかには議論があります。

3.報道、批評、研究などのための「正当な範囲内」であること

 著作物の内容や作者の誹謗中傷、デマの流布などを目的とした掲載は、正当な範囲を超えており、「引用」と見なされない可能性があります。

4.引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること

 引用は、あくまでも補助的に行うもの。自分で創作・研究した部分の内容や分量がメインでなければ、「引用」とは認められません。ただし、どのくらいの比であればよいかは、場合によって異なります。

5.カギかっこなどにより「引用部分」が明確になっていること

 自分の文章や作品と、引用したものとの境界がハッキリ分かるような形式で引用されていなければならない、ということです。この記事内にも引用部分がありますが、基本的には以下のように示しています。

6.引用を行う「必然性」があること

 引用しなくても、引用部分以外の内容や分かりやすさに影響がない場合は対象外とされます。簡単に言うと「どうしても必要なときに、最小限で引用しましょう」ということです。

7.「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)

 先の5.「カギかっこなどにより『引用部分』が明確になっていること」を参考。

 以上を踏まえて考えてみると、Twitter上に個人が投稿しているテレビ番組の画像、映像は、ほとんどが引用の要件を満たしていない無断転載だと思われます。

 ブログで長々と批評・考察を書き、形式も守っている場合、引用と認められる可能性があります。しかし、Twitterでは複数ツイートにまたがっていない限り、自分で書く分量は基本的に140字以下しかありません。また、単に「このシーンが面白かった」「この俳優さんがかっこよかった」と思って投稿しているだけで、批評・研究を目的としていないケースが大半なのでは?

 テレビ番組の映像・画像をネット上に載せるのは絶対にNG……というわけではありませんが、引用の要件を満たしておらず、著作権に抵触しているケースはかなり多いはず。なお、著作権だけでなく、肖像権の問題から違法になることもあるのでご注意ください。

 しかし、無断転載の量に反して、「著作権を侵害しているので賠償金を」「裁判で訴えます」と法的トラブルになった話はあまり耳にしません。著作権侵害を問うために裁判を行うと費用も手間もかかりますから、テレビ局側が見て見ぬふりで済ませてしまうことが多いのでしょう。

 ただし、もし自分が投稿したテレビ番組のキャプチャー画像、映像などに対して削除依頼が来たら、引用の要件を満たしている自信がない限りは従った方がいいはずです。

参考文献

作花文雄『詳解 著作権法(第4版)』ぎょうせい、2010

吉田大輔『全訂版 著作権が明解になる10章』出版ニュース社、2009

北村行夫『新版 判例から学ぶ著作権』太田出版、2004

公益財団法人 日本写真家協会著作権委員会編『写真著作権 第2版』太田出版、2016

文化庁 著作権なるほど質問箱

制作協力

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