Rozhovor s vývojovým personálem "EGRETII mini".
タイトー歴代のアーケードゲーム40タイトルを収録し、汎用ビデオゲーム筐体「EGRETII(イーグレットツー)」を手のひらサイズにコンパクト化したゲーム機、「EGRETII mini」の発売がいよいよ間近に迫ってきた。【この記事に関する別の画像を見る】 本機の最大の特長は、タイトルに応じて液晶モニターを回転させて、縦または横向きに自由に切り替えられる画期的な機能を搭載しているところにある。さらに別売りの「イーグレットツー ミニ専用パドル&トラックボールゲーム拡張セット」を購入すると、「アルカノイド」や「サイバリオン」などパドルおよびトラックボールを使用してプレイする10タイトルが追加で遊べるようになる。 とりわけレトロゲームファンには垂涎のアイテムになるであろう本機は、いったいどのようにして開発されたのだろうか? 当GAME Watchでは、本機の開発を担当したタイトーの惠川哲雄プロデューサー、同じくディレクターの藤渡尊浩氏に直撃取材を敢行。両氏が「EGRETII mini」に込めた並々ならぬこだわりと、歴代タイトー作品への愛情にあふれたお話をタップリとお伝えしよう。※本インタビューはリモートにて実施しました。■ モニター回転機能の実装にあたり、「EGRETII」の選択は必然だった――本日はよろしくお願いいたします。まずは「EGRETII mini」を開発しようと思ったきっかけから教えて下さい。惠川氏:最初に企画が立ち上がったのは2016年頃ですね。当時からレトロゲームがブームになっていて、海外向けにタイトーのIPをいろいろライセンスアウトしていましたので、市場があることがだんだんわかってきたのですが、まだ社内では担当する部署がありませんでした。その後、弊社では「電車でGO! PLUG&PLAY」を発売したところ、再生産した復刻版も含めて完売しましたので、この機会に流通も含めて体制を組み直すことになりました。 その組み直しをしている中で、タイトーのゲーム好きのメンバーが集まったときに「もしかしたら、タイトーの昔のタイトルを集めたゲーム機が作れるかもしれないね」という雑談から「EGRETII mini」の発想が生まれました。――会社から「EGRETII mini」開発、発売のゴーサインが出て、実際に開発がスタートしたのはいつ頃ですか?藤渡氏:2020年の10月頃ですね。惠川と私、それからハードや機構部分を担当した鶴身の3人と、営業のスタッフの意見も取り入れながら、私が企画を取りまとめる形で開発を始めました。企画がまとまるまでに約2カ月、12月までかかりましたね。で、順調に仕事が進んだかなと思いきや、そこから会社の承認が下りるまでがもうタイヘンで、だいたい半年ぐらいかかりました……。惠川氏:承認までに時間がかかったのは、今まで会社でこういうものを売ったことがなかったので、何台ぐらい売れるのかとか、収録タイトルは本当にこれでいいのかとか、何度もダメ出しを受けたからですね。――本機を商品化するにあたり、タイトーが今までに数多く開発、発売した汎用ビデオゲーム筐体の中から、「EGRETII」を選んだのはなぜでしょうか?惠川氏:古いゲームを収録するので、当初は「MM-5」とか「CANARY(カナリー)」筐体(※1)なども検討したのですが、最終的にはモニターの回転機能を実装することを考えた結果、「EGRETII」に決めました。※1……「MM-5」「CANARY(カナリー)」筐体:どちらも25インチモニターを搭載した、タイトー製のアップライト型汎用ビデオゲーム筐体。90年代にタイトー直営店を中心に多くのゲームセンターで使用されていた。藤渡氏:ミニ筐体で、縦画面と横画面の両方の収録タイトルをどうしても遊ばせたいと考えていたら、ちょうど「EGRETII」の時代からモニターを簡単に回転できる機能(※2)が付き始めたことを思い出しましたので、これなら今回のコンセプトにピッタリだなと思いました。私と惠川は同期入社で、当時は店舗研修に行くと「CANARY」がたくさん置いてありましたから、こちらもかなり愛着があったんですけどね。※2……簡単に回転できる機能:当時の多くの筐体は、モニターを固定しているネジやボルトをいったん外してから、重たいブラウン管を手で持ち上げて向きを変える仕組みだったが、「EGRETII」は1人で簡単に向きを変えられるターンテーブル式の機構を搭載していた。――確かに、私も元ゲーセン店員時代にモニターの向きを変えるのは面倒だなと思った経験がありますので、「EGRETII」のような便利機能がある筐体は本当にありがたかったです。だからこその「EGRETII mini」になったというお話はナルホドナットクですね。藤渡氏:縦でも横でも、ちゃんと遊ばせるのがコンセプトである以上、これが実現できない状態で出すのは正直どうかなと思いました。「EGRETII mini」は後発のミニゲーム機ですし、だったらなおさら細かいところまでこだわったものを出さなければダメだろうと。先程、会社の承認が下りるまで大変だったとお話をしましたが、役員たちの前でモニターが回転するところを実際にやって見せたら一発で通りましたね。何だ、こんなことならもっと早く見せればよかったなあと(苦笑)。惠川氏:実際に見せたのが一番大きかったですね。初めのうちは「回転させます!」と口で言ってもなかなか伝わらなくて、「縦横比が違うし、うまくハマらないんじゃないの?」とかすごくツッコまれました。「大丈夫です、ちゃんとハマりますから!」って説明しても「だいたいみんなそうやって言うけどさあ……」とか言われたりしたので、中国で製造したものを映像で撮って見せたりもしたのですが、それでも信じてくれなくて……。藤渡氏:でも、我々の手元に現物が初めて届いて、モニターを回転させたときは「これ、スゴイよね!」って自分たちで作ったのに感動しましたね。で、早速社長や役員に現物を見せに行ったら納得してくれました。――本機の量産体制を作るにあたり、何か技術やコスト面などでご苦労はありませんでしたか?藤渡氏:モニターを回転するときに、画面をいったん真っ暗にするのか、それとも映ったままにするのか、それからどのタイミングで画面を縦から横、または横から縦に表示を変えるのか、かなり悩みました。ほかにも、実際の筐体と同じようにカバーをいったん開いてから回転させるのは面倒だし、どうやって機構の部分を作るのかを考えるのが一番大変でした。惠川氏:出来上がった「EGRETII mini」のプロトタイプは、去年の東京ゲームショウ(TGS)で最初に出展したでのすが、会場で広報担当の青木がモニターをクルクル回していたら留め金の部分が折れちゃったんですよ。で、TGSが終わった後に作り直したのですが、出展したおかげでミスを発見できたのは結果的に良かったですね。藤渡氏:そうそう。TGSの終了後に、モニター切替の部分の機構も設計を変更しましたよね。惠川氏:マスターアップが近付いたタイミングでしたけど、何とか間に合いましたね。私が「モニターを押し込んだときに、ヒュッと向きが変わるほうがいいなあ」とか、いつも好き勝手なことを言うものですから、制作を担当された方はいろいろ大変だったと思います……。――不幸中の幸いと申しますか、発売前にミスが発覚したおかげで対処ができたわけですね。惠川氏:「EGRETII mini」は我々自身が作ったものですから、やっぱりそーっと大事に使おうとしますよね? でも青木とかが動かすと、雑にガーンと動かしちゃうんですよ。青木氏:そんなことないですよ~!(苦笑)惠川氏:でも、それでミスに気付けましたからね。発売前の耐久テストを実施するよりも先に、ミスが見つかったのはすごくありがたかったです。――以前に本機を拝見させていただいたときに気づいたのですが、本来は縦画面のタイトルでも、モニターを横向きにしたままでもちゃんと遊べるようになっていたのでびっくりしました。逆もまた然りで、横画面のタイトルを縦向きの状態でも遊べますが、あえて異なる向きでも遊べるようにしたのは、何か理由があるのでしょうか?藤渡氏:理由は特にありません。実は開発当初は、モニターを縦向きにするギミックがなかったので、しばらくの間は全タイトルを横向きでデバッグしていました。モニターを縦向きにできるようになった後も、横画面に表示できる状態で全部残しておいた結果、たまたまどちらの向きでも遊べるようになったという、単なる偶然の産物です。何かこだわって作ったというよりは、開発の延長上でこういう仕様になっただけなんですね。 「EGRETII mini」には、しばらく放置しているとデモ画面が起動する機能があるのですが、縦向きのときは縦画面のタイトルだけを、横向きのときは横画面のタイトルだけデモを流すのは、けっして不可能ではないのですが構造上すごく難しいんですよ。なので、デモ画面が流れるタイトルはモニターの向きに関係なく、ランダムで切り替わるようにしました。惠川氏:まさに結果オーライでしたね。例えば「スペースインベーダー」は、本来は縦画面のゲームですよね? でも、今までに移植されたコンソール版は全部横画面ですし、私みたいなライトユーザーが遊ぶと、縦画面にした場合はUFOを撃つのが難しいんですよ。邪道ではあるのですが、今では横画面のほうがすっかり慣れちゃいましたし、今となっては横画面でも遊びやすくなっているように思いますね。――わかります。UFOは画面の一番上のラインを動くので、縦画面の場合はビーム砲との距離が遠くなる分だけ、撃つタイミングを間違えやすいんですよね。惠川氏:そうなんですよ。横画面のほうがUFOを狙うのがメッチャ楽なんです(笑)。■ 各種オプション機能に秘められた並々らならぬこだわり――本機はHDMI出力に対応していて、なおかつ縦画面の出力もできるのは本当にありがたいですね。藤渡氏:ありがとうございます。普通のご家庭のテレビは横画面が普通ですし、我々としてもまずは「EGRETII mini」本体でゲームを遊んでいただきたい思いがありましたので、実は当初は縦画面の出力は考えていませんでした。ですが、開発の途中から「何で外部出力のときは縦にして遊べないの?」と疑問が湧いてきました。また、最近はPC用モニターにゲームを接続して遊ぶ方も多いので、じゃあちゃんと縦画面でも出力できるようにしようと思って対応させました。――本体設定メニューには、HDMI出力時に「壁紙」が表示できる機能などを用意していますが、なぜこのような機能を実装しようと思ったのでしょうか?藤渡氏:「壁紙」は、タイトーアメリカ製のアメリカンキャビネット筐体をイメージしたデザインにしています。アメリカンキャビネットは、「EGRETII」とは対照的に黒を基調としたデザインなのですが、「EGRETII mini」は当初から海外でも販売することを決めていましたので、やはり海外で売る場合は海外のデザインに合わせて、タイトーアメリカで作ったプレートの形に合わせたほうがいいだろうと思いました。 そのデザインをどうやって実現させるかを考えたときに、昔の筐体にはベゼルというプラスチック製の絵が描かれたカバーがあったのですが、テレビに映したときに「壁紙」の絵がベゼルみたいに表示されたら面白いだろうなと思いつきました。先程、惠川も申してましたが「EGRETII mini」は後発ですので、筐体にベゼルがあったタイトルだけでなく、後にベゼルがなくなった時代に発売されたタイトルも含め、全部「壁紙」を作ろうとこだわって作りました。――ナルホド。「壁紙」は昔あったベゼルのイメージだったんですか! では、画面表示が微妙ににじむ「フィルタリング」も昔のブラウン管モニターを疑似的に再現したワケですね。惠川氏:いいえ、そうではないんです。「フィルタリング」というのは、ドットがくっきり見えるのか、それともぼかして見えるのかを設定するためのものです。復刻ゲーム機などには、よくラインスキャン、つまり走査線を疑似的に見せる機能が入っていて、懐かしい雰囲気が出るのはすごくいいのですが、実際に遊ぶときはあまり使わない機能なのかなあと。疑似的ではなくて、本当にラインスキャンを実装することも考えましたが、もしそのせいで処理に負荷が掛かってしまうと意味がなくなってしまうのでやめました。 その代わりに、昔のゲームのドット絵職人さんたちが、ドット絵のガタガタをなるべく見せないよう、まさに職人芸で作ったデザインがわかる、ぼかしの入った「フィルタリング」と、ぼかしだけを外した形で、くっきりドットが見えるものの2種類を、何とか作れたらいいなあと考えました。本来であれば、ドットがくっきり見えるほうをOFFに、ぼかすほうをONにするところなのですが、「EGRETII mini」では我々のこだわりで、逆にくっきり見える場合をONに、ぼかすほうをOFFにする仕様に決めました。 今の若い人が、もしぼやけたほうの絵を見ると、「コレ、何で画面がボケてるの?」って絶対に言ってくると思うんですよね。なので、今回は若い人向けに合わせる形で、くっきり見えるほうをONにしました。いろいろな人から「逆だよ!」ってツッコまれましたけど(笑)……。惠川氏:私もラインスキャンの表示は、自分で遊ぶ時にはあまり使わないんですよ。やっぱり画面が綺麗に見えないですし、その機能を入れた結果、処理が重くなったり不具合が出たらしようがないねと、当初から藤渡とお互いの意見が一致していました。だからこそ、くっきり見えるほうを標準にしましょうと。――メニュー画面で流れるBGMも、設定メニューで3種類から選択べるようになっていますが、わざわざ3種類も用意したのはなぜですか?青木氏:こちらの質問は、ZUNTATAの石川(勝久氏)にコメントしてもらいましたのでご紹介します。石川氏のコメント:メニュー画面は何度も繰り返し見ることになるので、その日の気分によって曲を変えられると面白いかと思い3曲を用意しました。1曲目は「アウターゾーン」、「フェアリーランドストーリー」で使われている音源チップ「MSM5232」を、2曲目は「ガンフロンティア」や「メタルブラック」などで使われている音源チップ「YM2610」の音色をモチーフとしています。これらの2曲は、元ZUNTATAの瓜田幸治氏に制作していただいたのですが、音色だけでなく曲調もその当時の雰囲気を感じさせるようなものになっています。 そして3曲目は、現ZUNTATAのメンバーである土屋昇平に音源しばりのない、自由なサウンドとして制作してもらいました。これらの3曲で、タイトーのゲームサウンドの歴史をたどれるというのが裏テーマです。――ほかにもメニュー画面では、カーソルを上下に動かしたときの音がそれぞれ異なったり、電源を切ったときにもジングルが流れたりするなど、サウンド面でもかなり細かいところにまでこだわっている印象を受けました。藤渡氏:当初は本体の電源を入れたときに、ザザッというブラウン管モニターの音を再現したかったのですが、処理などの面で問題が発生することと、もし毎回その演出を挟んでしまうと、今すぐゲームを遊びたい人にとっては邪魔になるだろうという理由からやめました。 昔は弊社でもテレビCMをよく流していて、「キャッチ・ザ・ハート!」というキャッチコピーを使用していたのですが、そのときに流れるメロディも再現したいなと思っていました。でも、時代が一部の収録タイトルよりも若干古いものですし、ちょっと違うかなあと。そこで石川と相談をしまして、最後のキメの部分に使うことにしました。惠川氏:電源を切ると「キャッチ・ザ・ハート! ターイトッ!」のメロディを、ちょっと変えたものが流れるようにしました。みんな社歴が長いので、自然とこだわった内容になっちゃうんですよね。以前に「EGRETII mini」の体験会を秋葉原で開催しましたが、会場で遊んだ方も電源を切ることはおそらくなかったと思いますので、製品版で初めて電源を切ったときには皆さん多分びっくりすると思いますよ。藤渡氏:電源を切ったのに、何だか終わりに感じないんですよね(笑)。青木氏:効果音は石川が手掛けました。今回収録のゲームに合わせて、シンプルかつ少しレトロ風味なサウンドとなっています。決定音が「ダライアスII」のコイン(クレジット)音の早回しになっていたりと、ちょっとした小ネタもありますので注意して聴いてみて下さい。また先ほどより話が出ている電源OFF時のジングルは「キャッチ・ザ・ハート! ターイトッ!」のメロディをZUNTATAのMASAKIが今風にしたものを、石川がさらにアレンジしたものになっています。■ 未発売に終わった幻の作品の移植も実現! 収録タイトル決定までの経緯――「EGRETII mini」を最初に公表したのは2022年夏でしたよね? リリース当初のユーザーからの反応はいかがでしたが?藤渡氏:Twitterで「カイザーナックル」がトレンド入りするという、誰も想定していなかったことが起きました。ジェネラル(※3)が再び話題になったみたいで(笑)。※3……ジェネラル:「カイザーナックル」のラスボスのこと。プレーヤーの攻撃がなかなかヒットせず、一瞬のスキ突いて強力な攻撃を立て続けに叩き込む反則級の強さを誇る。惠川氏:収録タイトルを小出しに、5回に分けて発表したのは、実はROMの準備がきちんとできるかどうか判明しないものがあったからなんです。特に、4回目と5回目の発表のときはもうヒヤヒヤで、最後の1タイトルだけがどうしても入れられなくて、39タイトルだけ発表しようかとも一時期考えていました。 最後まで難航したタイトルというのは「アウターゾーン」で、解析をするにあたって基板からデータの吸い出しがどうしてもできなかったからです。アーケードゲームの基板なので、コピー対策は当然してあるから簡単に吸い出せないのは当たり前なんですけど(苦笑)、今まで一度も移植されていないタイトルだったので、今回どうしても移植しようと思っていましたので、発表できたときは正直ホッとしました……。藤渡氏:万が一に備えて代替案のタイトルもいくつか用意していましたが、発表の2日前に移植できる目処が立ったのでどうにか間に合いました。Twitterとかには、「『アウターゾーン』を移植してほしい!」と多くの皆さんが書かれていたのですが、「そんなことは、我々もわかってますよ! でも、解析ができないうちは移植できないんですよ!!」って泣きながら開発を進めていました。(一同爆笑)――「EGRETII mini」には40タイトルも収録されていますが、これだけの数を選ぶはかなり大変だったのではないでしょうか?惠川氏:実は収録タイトルは、藤渡が最初に「こういうものを入れたい」と、ざっと作った企画書にリストアップした内容からほとんど変わっていません。みんなの意見が割れたりすることもなく、「タイトーを代表するタイトルはこれだよね」と絞り込みもだいたいできていました。それから、タイトーが開発したと皆さんが思っていたタイトルが、実はタイトーは販売だけで、開発は別のメーカーだったりするものもあるのですが、そんなタイトルもちゃんとお見せしようと思っていました。藤渡氏:私も惠川も鶴身もそうでしたが例えば「究極タイガー」は東亜プランさんの開発だったことをタイトーに入社してから知ったケースが多いんです。当時は開発会社が表に出てくることは全然なかったですから。――「究極タイガー」はインストカードにタイトーのロゴが印刷されていますから、誰だってタイトーが作ったゲームだと思ってしまいますよね。藤渡氏:おっしゃるっとおりですね。我々も開発がタイトーではないことを入社後に知ったので驚きました。「究極タイガー」と、それから「TATSUJIN」に関しては、我々としてもタイトーのタイトルとしての思い入れがすごくありましたので、ライセンスのお願いをしたところご快諾をいただけて、「タイトーさんとお仕事するのは久しぶりですね」とおっしゃって下さいました(笑)。――今回が初の移植となるタイトルもいくつかありますよね? そのうち「ルパン三世」は、いわゆる版権モノですが、許諾を得るにあたって何かご苦労などはありませんでしたか?惠川氏:「ルパン三世」は、私がどうしても入れたかったタイトルでした。以前に弊社では、プレイステーション 2用ソフト「タイトーメモリーズ」シリーズを発売しておりまして、その当時から「ルパン三世」を入れたかったのですが、許諾を取るのはちょっと無理だろうなと思って特に交渉はしていませんでした。ですが、今回は交渉が必要なものもちゃんと入れようという方針で動きまして、時間は掛かりましたが許諾を得ることができました。収録のお知らせが4回目の発表と遅くなったのは、まさにこのためですね。藤渡氏:それから、弊社に林(幸人氏。本機の広報担当で通称「お林さん」)というマニアックな人間がいるのですが、あるとき倉庫で基板を漁っていたら「アドベンチャーカヌー」の基板を見つけまして、「これをどうしても入れてほしい。SJ SYSTEM基板(※4)を使ったタイトルはどうしても入れたい」と言ってきたので収録することにしました。このような形で新たに収録を決めたタイトルも多少ありましたが、ラインナップは当初の企画段階からほとんど変わっていません。※4……SJ SYSTEM基板:タイトー製アーケードゲーム用基板の1種。ちなみに「パイレートビート」と「エレベーターアクション」の両収録タイトルはSJ-C2C3 SYSTEMを使用している。なお、基板の名称は本機のメニュー画面で各タイトルにカーソルを合わせると表示されるので、こちらもぜひご注目を。――変わったところでは、未発売の対戦格闘ゲーム「断仇牙(だんくうが)」も収録しましたよね? あえて未発売タイトルを選んだのはなぜですか?藤渡氏:今回の収録タイトルのうち、基本6ボタンを使用するのは「カイザーナックル」だけなので、6ボタンは「カイザーナックル」専用になっていたんですよね。ほかにも6ボタンで遊べるものは何かないのかと思って調べたら「断仇牙」があったことに気がつきました。ですが、正式に発売されていないタイトルなので収録はちょっとできないかなあと……。 例えば「ダライアス外伝」のエクストラバージョンなどにように、本来はロケテストの終了後に発売が中止になったものはそこで開発をストップしちゃうのですが、「断仇牙」は最終仕様書もマスター版のROMもちゃんと出来上がっていたんです。じゃあ、それならば特別収録として入れてもいいのではと考えて収録を決めました。惠川氏:我々も「断仇牙」を開発していた時点ですでに入社していましたので、そんな状況があったことは知っていました。ロケテストの段階ではバグがありましたので、もしバグが残ったままの状態であれば収録はやめようと考えていたのですが、諦めずに調べてみたらマスターまできちんと仕上がっていることがわかったので、じゃあ入れましょうと。「断仇牙」も調整はギリギリまで続きましたが、偶然に偶然が重なって収録することができました。――ちなみに、収録タイトルの中でおふたりが特に思い入れのあるタイトルは何ですか?惠川氏:「ガンフロンティア」ですね。私は営業もやっているのですが、販売店様の所に出掛けると、もう商談にならないんですよ。どういうことかと申しますと、私からお願いをしなくても皆さんが「ちょっと遊ばせて」と「ガンフロンティア」を選んで夢中になって遊び始めるので、こちらの話を全然聞いてくれないんです(笑)。それだけ皆さんが、「タイトーのアーケードゲームといえば『ガンフロティア』なのか」と改めて思いましたね。それまでは「レイフォース」とか「メタルブラック」とかって言うのかな、とてっきり思っていました。 去年の年末に、秋葉原で開催した体験イベントの会場では、「ガンフロンティア」のオープニングを大きなモニターでずっと流していたのですが、皆さんが写真を撮ったり、ずーっと眺めていたりするので驚きましたね。これだけ多くの皆さんに喜んでいただけているのに、今まであまり復刻していなかったので、これを機に「ガンフロンティア」もタイトーのタイトルであることを広めたいですね。藤渡氏:たくさんあるので、1つに絞るのは難しいですね……。私がデバッグの合間によく遊んでいた、「ルナレスキュー」とか「ヴォルフィード」とかが個人的には好きですね。どちらも元々は縦画面のゲームですが、ゲームセンター以外の場所で縦画面で遊べるのが新鮮でしたし、息抜きに遊び始めると、ついつい面白くて夢中になっちゃうんですよね。■ 調整にとことんこだわったパドル&トラックボール。将来は「EGTERII mini」を一大プラットフォーム化する構想も!?――「EGRETII mini」は、別売りの「イーグレットツー ミニ専用パドル&トラックボールゲーム拡張セット」を購入すると、さらに10タイトルを収録したSDカードが付いてくるのも大きな目玉のひとつですよね? パドルとトラックボールを使うタイトルを追加した理由もぜひ教えて下さい。藤渡氏:SDカードスロットを用意することも、「パドル&トラックボール拡張セット」を発売することも、最初の企画書の段階で考えていました。以前から「アルカノイド」や「サイバリオン」は移植のリクエストが多かったので、これらのタイトルは絶対に必要だろうなと。惠川氏:あと「マリンデート」は、Twitterとかでも「遊びたい!」ってツイートされたりして、かなりの反応がありましたね。――現在では、昔のパドルやトラックボールが付いた筐体を稼働させているお店の数が少ないですし、最近発売されたタイトルでもこれらのデバイスを使用したタイトルの数がそもそも少ないですよね? 部品の調達が非常に難しかったのではないでしょうか?惠川氏:どうやって調達するかよりも、どうやって小さく作るのかがものすごく難しかったですね。トラックボール自体は、メダルゲームなどでも使っていましたのですぐに手に入ったのですが、小さくしたことで転がしたときに動く距離などをイチから全部、調整をし直す必要が生じました。調整は藤渡が担当したのですが、なかなかうまくいかなくて12月のマスターアップのギリギリまでかかりましたね。ユーザーの皆さんにとって、操作感は最もこだわるところですから。藤渡氏:調整はとにかく大変でした。昔のゲーセンで「サイバリオン」をやり込んでいたプレーヤーは、手をブンブン振り回しながらトラックボールを動かしていたと思いますが、今回の「専用パドル&トラックボール」でほかの人が遊んでいるのを見ていたら、別のボタンに手がぶつかってボタンをうっかり押してしまうことがよくあったんです。そこで、「サイバリオン」だけに「こだわり設定」というメニューを用意して、この設定をONにするとボタンを押しても入力を受け付けないようにしました。 パドルについても、ちょっとだけ回したら右から左まで一気に動くほうがいい人と、ゲームセンターと同じようにグイッと大きくひねらないと大きく動かないほうがいい人とで、こちらも人によって好みの幅がすごく広いことがわかりました。ですので、入力の幅を5段階に調整できる機能を、トラックボール共々あったほうが楽かなあと考えて用意しました。惠川氏:以前に「サイバリオン」のプロモーション映像を公開したときには、まだパドルの調整がうまくいってなかったのでレバーで操作して収録したら、ネット上に「操作感が悪そうだ……」みたいな書き込みが結構あったんですよ。ですので、皆さんのご要望にちゃんとお答えしようと、藤渡がすごいプレイ回数をこなして作ったトラックボールとパドルも、ぜひお楽しみいただきたいですね。藤渡氏:昔のアーケード版というよりも、今の「EGRETII mini」に合わせた調整にしてありますので、例えば「キャメルトライ」とかは、昔よりも遊びやすくなっていると思いますよ。――「EGRETII mini」の初回購入特典として、「歴代タイトーロゴ&イーグレットツー ミニステッカー」シートがもらえたり、初回限定の「フルパッケージ 豪華特装版」を購入すると、ステッカー以外にもCDとか攻略本などの特典が付いてきたりしますよね? 特典にはどんな特徴があるのかもぜひ教えて下さい。藤渡氏:ステッカーは時代を追うごとにどんどん変わっていったタイトーのロゴマークを楽しんでいただこうと思いついて、歴代のロゴマークが入ったものを作りました。ついでに申しますと、実は私もこういうものが欲しかったんですよ。昔から慣れ親しんでいて愛着がありましたので(笑)。惠川氏:先程の「キャッチ・ザ・ハート!」もそうですが、開発メンバーの感性がみんな一緒なので、どうしても今よりも昔のものを作りたい思いがあったんですよね。藤渡氏:それからデカールと言いますか、何か飾り付けるようなものはないかと考えて、「EGRETII mini」は6ボタンなので「カイザーナックル」ですとか、ほかにも「屋内用」などのステッカーもご用意しました。ユーザーの皆さんから「お、わかってるじゃん!」って書き込みがいろいろあったので嬉しかったですね。――ナルホド。では「フルパッケージ 豪華特装版」に同梱される特典CDの収録内容も教えていただけますか?青木氏:ZUNTATA完全プロデュースによる特典CD「70/35(ナナゼロサンゴー)-TAITO70th/ZUNTATA35th ANNIVERSARY-」は、その名のとおりタイトー70周年・ZUNTATA35周年を記念した4枚組のアニバーサリーアルバムです。「EGRETII mini」収録タイトルを中心としたタイトーゲーム音楽を80曲以上収録しました。今回は基板からの収録音源だけでなく、オリジナルの作曲者が自ら手掛けたアレンジバージョンも収録しておりまして、過去から現在までのタイトーサウンドが一気に楽しめます。惠川氏:これはまったくの偶然ですが、タイトーが来年で70周年、ZUNTATAが35周年を迎えるタイミングで、ネーミングもうまくハマりましたので、私もとても気に入っています。――同じく、特典DX攻略本「電撃TAITO STATION VOLUME1」はどんな内容なのでしょうか?藤渡氏:こちらの制作は、KADOKAWA Game Linkageさんにお願いしました。今はネットでゲームの情報を調べながら遊べる時代ですが、昔のゲームの情報は雑誌に載ったり載らなかったりしていましたので、攻略本という形で全部のタイトルを紹介できたらいいなと思って作りました。例えば「ニュージーランドストーリー」や「フェアリーランドストーリー」のように、見た目がカワイイのにかなり難しいゲームは、普通の攻略本と同じくらい重厚な記事が載せてありますし、「カイザーナックル」などの格闘ゲームは必殺技のコマンドなども掲載しています。 企画の段階から、遊んでいる途中で行き詰まったプレーヤーの手助けをしたい、そんなきっかけから攻略本の制作をやってみたいと思いつきました。この1冊を読めば、収録タイトルをよりお楽しみいただけると思います。惠川氏:内容は読んでのお楽しみとなりますが、ものすごく出来がいい攻略本なので、きっと発売されたらネット上でかなりバズる気がしますね。――「EGRETII mini」の今後の展開についてもお尋ねします。SDカードスロットを利用して、追加タイトル別のコンテンツを発売する予定があるのでしょうか? 差し支えなければぜひ教えて下さい。惠川氏:SDカードで遊べるタイトルをどんどん増やしていきます! 会社の正式な承認を取るのはまだこれからですが、SDカードでゲームを増やせるのが「EGRETII mini」のセールスポイントであり、「それがあるから出すんだよね」と役員からも言われていますので、あとはどの時期に、どのタイトルを入れるのかをこれから詰めていきたいと思います。ほかにもタイトーのタイトルはまだまだイッパイありますからね。藤渡氏:我々の最初の目標は、「EGRETII mini」をハードとして普及させることなんですよ。ハードをたくさん普及させたうえで、SDカードを利用してどんどん遊べるタイトルを増やしていくという構想ですね。アーケードゲームは、やっぱりレバーとボタンを使ってこそ楽しく遊べますので、ハードの設計にはかなりこだわって作りました。惠川氏:それから、ほかのメーカーさんから「『EGRETII mini』で出したいです」と問い合わせがたくさんくることも祈っています。藤渡氏:タイトー製品に限らず、他社様のタイトルでも「『EGRETII mini』だったら出してもいいかな」と思っていただきたいなと思ったことも、実はいろいろこだわって作った理由のひとつです。惠川氏:そもそも「EGRETII」自体が汎用ビデオゲーム筐体ですし、ゲームセンターでいろいろなメーカーさんのタイトルが動いていたわけですから、「EGRETII mini」でもそうなれば理想的ですね。藤渡氏:つまり「EGRETII mini」が、ひとつのプラットフォームになることを目指しているんですよ。――今年の1月には、公式サイトで「収録希望ゲーム大募集!キャンペーン」を実施していましたが、追加タイトルを選ぶうえで参考になりましたか?藤渡氏:はい。かなり参考になりました。惠川氏:我々が移植したいと考えたタイトルが、ちゃんとユーザーの皆さんの目線と合っているのかどうか、今後もキャンペーンなどを通じてチェックしていきたいですね。――それでは最後に、GAME Watch読者に向けてメッセージをおひとりずつお願いします。惠川氏:「EGRETII mini」は、現段階で収録できるものを可能な限り入れまして、拡張パックも合わせると50タイトルをご用意しました。アーケード版から知っている人はもちろん、知らない人にも一度プレイしていただければ、「こんなゲームがあったのか!」とか、昔のプレーヤーがなぜハマったのかがよくわかると思いますので、この機会にぜひ遊んでみて下さい。藤渡氏:お陰様で、キャンペーンにお寄せいただいた収録タイトルのアンケートは1788名も集まりました。「ご自由にお書き下さい」の欄にも、「EGRETII mini」の発売に対する感謝のお言葉や、熱いコメントもたくさん頂戴しました。時代の流れや、許諾などの問題で移植が難しいタイトルが出てくるかもしれませんが、なるべく皆さんのご要望にお応えしたいですね。今後の展開にもぜひご期待いただければと思います。――ありがとうございました。©TAITO CORPORATION 2021 ALL RIGHTS RESERVED.
GAME Watch,鴫原盛之
最終更新:Impress Watch