• 12/02/2023
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完璧な走りでネフが金メダル獲得 負傷をおして走った今井は完走ならず


15時ちょうどのスタート。エヴァ・リヒナー(イタリア)がホールショットを決める photo:Nobuhiko Tanabe2番手でホームストレートを駆け出すヨランダ・ネフ(スイス) photo:Nobuhiko Tanabe未明からコースを濡らした重い雨雲は、断続的に降ったり止んだりを繰り返しながらも、午前中いっぱい伊豆・修善寺の日本サイクルスポーツセンター内に作られた伊豆MTBコース上空に居座り続けた。雨雲はレース3時間前に過ぎ去り、コースは急速に乾きを取り戻していったものの、風通しの悪い林間セクションは弱ウェットコンディションのまま。ただでさえ難しいコースはロックセクションの短縮こそされたものの、テクニックに優れる選手有利の状況を生み出した。レース周回は所定6周から5周となり、前日にマチュー・ファンデルプール(オランダ)の落車現場となった「桜ドロップ」には試走時と同じ木製ラダーが取り付けられた。スタートループで先頭に立ったロアナ・ルコント(フランス)とラウラ・スティッガー(オーストリア) photo:Nobuhiko Tanabe15時の号砲と共に、今井美穂(CO2bicycle)を含む38名がスタート。2020年世界選手権銀メダルのエヴァ・リヒナー(イタリア)がホールショットを決め、続く直登区間では今季ここまでのUCIワールドカップ全てで圧勝しているロアナ・ルコント(フランス)が先頭に立つ。ここにラウラ・スティッガー(オーストリア)が追いつき、今季成長著しい若手2人が引っ張る形でスタートループを完了した。全長3,850m、高低差150mのコースを合計5周回。メイン周回に入るとすぐ先頭の若手2人に対し、現世界チャンピオンのポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)やヨランダ・ネフ(スイス)といった、ここ数年ワールドサーキットの中心を担ってきた選手たちが追いつき、先頭グループを形成した。レース前試走で入念にコース確認をしていたスイスチームはここにシーナ・フライとリンダ・インダーガンドをも送り込み、メンバー全員が勝負の最前線へ。ネフを従えて先頭を走るポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス) photo:Nobuhiko Tanabe1周目の「桜ドロップ」を競り合いながら下るポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)とヨランダ・ネフ(スイス) photo:So Isobe急勾配区間を乗車でクリアするヨランダ・ネフ(スイス) photo:Nobuhiko Tanabeやがてフェランプレヴォとネフ、つまり新旧の世界王者が抜け出し、激しい鍔迫り合いのまま桜ドロップを通過した直後、その登り返しでフェランプレヴォが後輪を滑らせて落車した。滑り落ちたバイクを回収する間にフェランプレヴォは6番手まで後退してしまう。ライバルのミスを確認したネフは独走態勢を築き上げた。下りで得たスピードを登りに繋げるテクニックと瞬発力が求められる伊豆MTBコースのネフとの相性はまさに抜群だった。観客をどよめかせるスピードでテクニカルセクションを駆け抜け、絶妙なライン取りで降車することなく登りをこなす。2019年プレ大会の焼き直しかのような展開で、ネフはリードを積み重ねていった。先頭ネフを追うイヴィ・リチャーズ(イギリス) photo:Nobuhiko Tanabe2番手グループを形成するシーナ・フライ(スイス)とリンダ・インダーガンド(スイス) photo:Nobuhiko Tanabe4位グループに追いつき、抜け出した19歳のカータ・ヴァス(ハンガリー) photo:So Isobeネフを単独追いかけたイヴィ・リチャーズ(イギリス)は、やがてフライとインダーガンドのスイスコンビに追いつかれ後退。息を吹き返したフェランプレヴォがこの2人に追いつき攻撃に転じたものの、フライの登坂ペースに追従できず、やはり脱落。昨年、今年と波に乗ってきたフランスだったが、この日はルコントを6位、フェランプレヴォを10位に送り込むのがやっとだった。元世界王者のケイト・コートニー(アメリカ)やリオ五輪覇者ジェニー・リスヴェッツ(スウェーデン)、大一番に強いレベッカ・マコーネル(オーストラリア)たちが沈む中、五輪初出場の今井も苦しんだ。レース前の試走中に転倒し、胸を強く打ったという今井は痛みをこらえて走ったもののペースは上がらず、更に後輪パンクに見舞われて後退。選手活動の集大成として挑んだオリンピックはマイナス3ラップ、37位という結果となった。淡々と、しかしそれでいて強力なペースを刻むネフはレース中盤に2分ものリードを稼ぎ出した。他国を退けたフライとインダーガンドが2位グループを形成し、スイスはワンツースリー体制を確固たるものに。最年少19歳のカータ・ヴァス(ハンガリー)は追い上げて後半戦で4番手に浮上したものの、スイス勢の背中は遠すぎた。スイス国旗を掲げてフィニッシュするヨランダ・ネフ(スイス) photo:Nobuhiko Tanabe抱き合って表彰台独占を喜ぶネフ、フライ、インダーガンド photo:So Isobe最後まで安定したペースを貫いたネフは、ホームストレートで受け取ったスイス国旗を掲げてフィニッシュ。1分11秒後にフライが、その8秒後にインダーガンドが飛び込み、スイスが自転車競技で1904年セントルイスオリンピック(アメリカ)以来となる歴史的な表彰台独占を成し遂げた。「ダウンヒルで頭の感覚が鈍らないよう、気後れしないよう心がけた。でもこのコースに対する自信はあった」と言うネフ。元世界チャンピオン、そしてプレ大会覇者ではあるものの、肺挫傷と脾臓破裂を負った2019年の事故からの回復途上であり、優勝候補に挙げる声は少なかった。そんな下馬評を完璧なコース適性で打ち破っての金メダル獲得であり、銀メダルに甘んじた前日の男子レースの借りを、これ以上ない形で返上してみせた。スイスが表彰台を独占。銀メダルのフライ、金メダルのネフ、銅メダルのインダーガンド photo:CorVos男子選手やチームスタッフも表彰台で喜びを爆発させる photo:CorVos19歳ヴァスがメダルまであと一歩の4位。テルプストラは5位。28位のマコーネルが最終完走者となり、完走率は73.6%と男子レース(86.8%)よりも低かった。東京2020オリンピック 女子MTBクロスカントリー・オリンピック 結果
1位ヨランダ・ネフ(スイス)1:15:46
2位シーナ・フライ(スイス)+1:11
3位リンダ・インダーガンド(スイス)+1:19
4位カータ・ヴァス(ハンガリー)+2:09
5位アン・テルプストラ(オランダ)+2:35
6位ロアナ・ルコント(フランス)+2:57
7位イヴィ・リチャーズ(イギリス)+3:23
8位ヤナ・ベロモイナ(ウクライナ)+3:54
9位ハイリー・バッテン(アメリカ)+4:27
10位ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)+4:32
37位今井美穂(日本)DNF
text:So Isobephoto:Nobuhiko TanabeAmazon.co.jp 東京2020オリンピック・パラリンピック 公式ガイドブック ジュニア版 カテゴリー: 本メーカー: KADOKAWA参考価格: ¥1,549最安価格: ¥1,716アマゾン価格: ¥1,549東京2020オリンピック・パラリンピック 公式競技図鑑 カテゴリー: 本メーカー: KADOKAWA参考価格: ¥592最安価格: ¥1,811アマゾン価格: ¥592東京2020オリンピック公式記録集 カテゴリー: 本メーカー: KADOKAWA参考価格: ¥13,430最安価格: ¥29,800アマゾン価格: ¥13,430

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