• 23/03/2023
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男性から女性へ。変化するボディライン、“しっくり”と一致する心と体。【実録 トランスジェンダー美容 part1】

──そして、いよいよ本丸の性別適合手術。「女性器を作る大掛かりな手術なので、2週間の入院。大変なのは術後で、作った膣を体が傷だと認識して修復し穴を塞いでしまうので、それを防ぐために棒のようなもので穴を固定するダイレーションというセルフケアを1年以上続けなければなりません。はじめは歩くことも困難で、行動範囲も狭くなります。私の場合は比較的早く痛みが軽減され、ラッキーでした」

──手術の後に戸籍も変えたのでしょうか。「はい。性別適合手術をした診断書のほかに、子供がいないこと、婚姻関係がないことなど、いろいろな条件があるのですが、家庭裁判所に戸籍変更の申立てを行い、戸籍上も女性になれました。今の私は“子宮がない女性”なので、ホルモン治療が保険適用になったことが嬉しい。それまでずっと自己負担で経済的にも厳しかったから」

──今も治療は続けているのですか?「エストロゲン注射と、体に丸みを作るためのプロゲステロンの内服を。体重も3キロ増え、ヒップにも脂肪がついて少しボリュームが出ました。また、使用するホルモン剤の量が手術前に比べ大幅に減り、身体への負担も少なくなるという安心感もあります」

男性から女性へ。変化するボディライン、“しっくり”と一致する心と体。【実録 トランスジェンダー美容 part1】

──体も戸籍上も女性になった気分は?「やっと“しっくり”きた、という感じです。一番変わったのは、体より心でしょうか。自分の中の男と対峙する恐怖心や違和感が消えて、頑張って女にならなくちゃという焦りもない。心と体が一致したことで精神状態も穏やかになり、楽になりました。でも女になったら社会から軽視されていることも感じて、むしろ男らしく振る舞ってしまうくらいです。女性になり、初めて目に見えない男尊女卑の“何か”を感じています」

ファンデーションを省いた透けるようなすっぴんに、しなやかなロングヘア。ゆるっとしたスウェットとデニムというファッションのNさんは、ステレオタイプの過剰な女らしさとは無縁の自然体。その印象は、リラックスした中に芯の強さを感じさせるかっこいい女性像だ。「心と体が一致したことで、ようやく焦りが無くなった」と語るNさん。精神的な充実こそが美しさを創る。それを実証するインタビューとなった。

続く第二弾では、オタクレベルに突き詰めた“トランスジェンダー美容法”を紹介する(2020年11月中公開)。

Interview & Text: Eri Kataoka Editor: Toru Mitani

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By ERI KATAOKA