• 28/12/2022
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マイクラ×総合的な学習の時間で、社会が「自分事」になる学びへ

マイクラは、体育のサッカーで作戦を決めて取り組むのと同じ感覚

子どもたちは、どのようにマインクラフトの制作に取り組んだのか。またマインクラフトを活用した学びについてどのように感じているのだろうか。クラスを代表して、現6年生の佐野杏菜さんと安藤康陽さんに話を聞いた。

話を聞かせてくれた現6年生の安藤康陽さん(左)と佐野杏菜さん(右)

今回の制作はまず、「どのような建物を作り、どのように配置するのか、町の構想を考えることから始めました」と佐野さん。クラス全員で建築する施設を考え、グループでホワイトボードや自分のノートに町のアイデアを書き出して配置を考えた。売り手や買い手、そこで働く人や地域にとって、どのような施設が望まれるのか。さまざまな立場の人をイメージしながら構想を広げていったという。

各グループでマインクラフトで作る町の構想を考える

話し合いの結果、町の中心に藍畑をつくり、上空から見ると藍の葉の形になるよう施設を配置するアイデアに固まった。入口には案内所があり、生産過程がスムーズに進むように左回りに工房、工場、オフィス、資料館、地産地食レストラン、藍ショップの順番に施設を並べる。上板町が誇る藍とエシカル消費を世界に広めるための施設が揃った充実の「ハッピーエシカル藍ランド」だ。

マイクラでどんな町を作るか、みんなで話し合って構想が完成

続いて、誰がどの施設を制作するか担当を決めた。制作する際は、担当する施設ごとに班になり、それぞれが自分のパソコンの画面を見つつ、同じワールドの中に入って共同作業。子どもたちは向かい合って、コミュニケーションを取りながら作業を進めた。安藤さんは「マインクラフトでみんなで計画的にワールドを作る作業は、体育のサッカーで作戦を決めて取り組む感じと似ている」と、その作業の感覚を教えてくれた。

マイクラの共同作業は、「体育のサッカーで作戦を決めて取り組むのと似ている」

ちなみに、ふたりともマインクラフトは経験者で、小学校1年生のときからゲーム機で遊んでいたという。学校でマインクラフトができると聞いた時はうれしい半面、パソコンのキーボードでうまく操作ができるか不安だったそうだ。しかし、やり始めてみると、実際に苦労したのは操作ではなく、"アイデアをカタチにする"部分だったという。

マイクラ×総合的な学習の時間で、社会が「自分事」になる学びへ

オフィスを担当した佐野さんは、どうすれば働いている人の労働環境が良くなるのか、考えるのに苦労したそうだ。

「ただ仕事をする場所を作るのではなく、労働環境も考えて、従業員が休憩できるところを作りました。また休憩する場所にテレビや飲み物を置いて、働いている人同士が仲良くなるような工夫を考えました。マインクラフトでオフィスを作る前に、バングラデシュの縫製工場で起きた事故についても学んでいたので、班で労働環境を意識しようって話し合いながら作りました」(佐野さん)と、大人も驚くようなしっかりした構想を持って作っていたことを教えてくれた。

一方、藍ショップの制作を担当した安藤さんは、「マインクラフトでショップを作ることよりも、ショップ内に並べる商品の種類をどう増やすか悩みました」と話してくれた。「ネットでどのような藍染め商品があるのかを調べていたら、家で藍染めができるキットを見つけて、“これがあれば、もっと藍染めを広めることができる”と思い、(マインクラフト内の)ショップの商品に加えたりしました」と安藤さん。

2人とも、マインクラフトの制作を通して、それまで学んで得た知識や経験が生かされ、考える内容や視点が広がっていったことがよく分かる。またマインクラフトの建築そのものを楽しむことを超えて、労働環境や商品の販売など現実的な課題に向き合い、それらを解決するためにはどうすればいいかという、「自分事」として考えていることが何より素晴らしい。

従業員が休憩するための専用スペース。労働環境だけでなく、働いている人同士が仲良くなる工夫も考えた藍染の商品が並ぶショップの外観。環境を考えて木材を使用し、さまざまな人の来館を想定してユニバーサルデザインを取り入れた

佐野さんはマインクラフトの学習を通して、「発想力や表現力が成長したと思う」と語ってくれた。

「今までの学習は、藍がテーマだったら”藍だけを知る”ことが多かったように思いますが、マインクラフトを使うことで、藍以外の、周辺の問題を考えられるようになりました。労働環境についても、オフィスで人がどのように仕事をしているのか、その様子をYouTubeの動画を参考に表現しました。こういうアイデアは、絵で描くのは大変ですが、マインクラフトではいろいろな場面を少し工夫すれば簡単に表現できるので、表現力が上がったと思います」(佐野さん)。

また安藤さんは、地域や藍のことを広げる想いを強くしたと同時に、「マインクラフトの制作を通して、自分がどういう行動をすれば広げられるか、と考えるようになりました」と話してくれた。

「マイクラでは工房や工場、藍ショップまで、物の流れを考えて順番に配置したり、町をより良くするためにはどうしたらいいのかを考えました。また、工場の労働環境やショップの接客をどうしたら良いかなど、藍のことだけじゃなく、藍からどんどん枝分かれして、さまざまな事を考えられるようになりました」と安藤さん。担当した藍ショップには、外国人のお客を考慮して英語の案内を設置したり、ユニバーサルデザインを取り入れるなど工夫を凝らした。

2人の話からは、総合学習の仕上げとして、マインクラフトが子どもたちの考えをさらに発展させるツールとして役立つことが伝わってきた。大人は「マインクラフトはゲームだから」と思ってしまいがちだが、子どもたちはテーマや世界観を表現するために、さまざまなことを考えて作っていることがよくわかる。

工房や工場から藍ショップまで、物の流れを考えて順番に配置