光回線57.7%に携帯電話回線57.3%と肉薄…自宅パソコンなどのインターネット接続回線の実情
インフラとしてのインターネットの整備は進んでいるが、その中身もナローバンドからブロードバンドへと大きな変容を遂げている。その実情を総務省の通信利用動向調査(※)の最新版の結果から確認する。
今調査によると、2020年9月末時点の個人ベースでのインターネットの利用率(過去1年間にインターネットを利用したことがある人の率。いわば普及率)は83.4%。この調査結果における「インターネットの利用」とは、6歳以上、過去1年間にパソコン・携帯電話(従来型携帯電話だけでなく、スマートフォンやPHS含む)・ゲーム機・タブレット型端末などあらゆる端末で、インターネットにアクセスすることを意味している。アクセス対象の機器を自分が保有しているか否か、利用目的が私的か仕事上のものか、あるいは学校の学習用であるかなどは問われていない。学校の授業でのみ利用したとしても、携帯電話経由のみの人も「利用者」に該当する。
「自宅」の「パソコン」など(タブレット型端末、インターネットテレビなども含まれる。携帯電話やスマートフォンの「単独・直接利用」は、今件では含まれない)でインターネットに接続する際、その接続回線の種類はブロードバンド(光、DSL、ケーブルテレビ、携帯電話回線など)・ナローバンド(ISDN、電話回線によるダイヤルアップ、PHS回線)のいずれなのか、そしてその世帯普及率はどれほどなのかを記したのが次のグラフ。
複数回答なので双方を並列導入している場合もあるが、ナローバンド回線は2007年から2010年の間は、確実に普及率が減っている。しかしそれを底として、それ以降は若干ながら増加の動きを示していた。ところが2013年以降は大きく減少しているのが確認されている。なお今件項目の調査対象母集団は「自宅からパソコンなどでインターネットを利用している世帯」であることに注意。
ブロードバンド回線の世帯ベースでの利用率(インターネット接続世帯比)は最新値の2020年で93.4%。パソコンなどでインターネットを使っている世帯では、9割強の世帯が導入している計算になる。データが開示されている最初の年2006年から2020年までに25.5%ポイント増加しており、確実な普及のようすがうかがえる。もっとも2013年以降はほぼ横ばいに移行し、それ以降の値の上下は誤差や集計上の問題が生じているようだ。例えば2019年分では但し書きとして「調査票の設計が一部例年と異なっていたため、経年比較に際しては注意が必要」との文言がある。
入れ替え的な立場に見える「ナローバンド回線」と「ブロードバンド回線」の伸縮を比較すると、後者の伸びがやや鈍いのは、インフラの整備が遅れていること、「ブロードバンド・ナローバンド双方を使用している人が後者の利用を取りやめたのみで、ブロードバンドは元々利用していた事例があり、その場合はブロードバンドの利用率向上には換算されない」と考えることができる。さらに加えると後述するが、PHS回線の増加に伴い、ナローバンド回線の利用世帯率が一時的に底上げされていたのも一因。ただし2013年においてはこの微妙な位置関係は大きく変わり、ブロードバンドが大きく伸びて、ナローバンドが大きく落ちる結果となり、その状況は直近年まで継続している。
ブロードバンド・ナロードバンド双方で、具体的にどのような種類の回線を利用しているのかを示した利用率グラフが次の図(一部項目のみを抜粋)。
かつて日本においてブロードバンド環境を加速度的に浸透させ、一世を風靡した、ADSLに代表されるDSL回線はその利用率を下げ、一方で光回線が急速に伸びを見せている。
最新のデータとなる2020年分においては、前年比で光回線と携帯電話回線が大きく伸びている。携帯電話回線が伸びたのは、新型コロナウイルスの流行により自宅勤務を余儀なくされた人たちのうち、ブロードバンド回線がまだ自宅に無く、整備を早急に求められた人が選択したからだろう。
2019年の時点でトップの光回線の普及率は利用者限定で57.7%。「5世帯に3世帯足らず」「過半数」の域に達しているが、かつてのような加速度的な普及率上昇ではない。やはり機動性・柔軟性に優れたWiMAXなどに目が移るのは仕方の無い話。今後も自宅の固定回線でのブロードバンド化が進むには違いないものの、パワーバランスには小さからぬ変化が生じるに違いない。新型コロナウイルスの流行による在宅勤務の急速な浸透が、その変化を加速させるきっかけとなるだろう。
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※通信利用動向調査
2020年分は2020年9月に、「世帯向けは都道府県および都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に」「企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に」対して、郵送あるいはオンラインによる調査票の配布および回収の形式によって行われている。有効回答数はそれぞれ1万7345世帯(4万4035人)、2223企業。各種値には国勢調査や、全国企業の産業や規模の分布に従ったウェイトバックが行われている。
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