• 29/04/2022
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複数アプリの同時表示でマルチタスクが捗るAndroidタブレット「LAVIE Tab T12」

複数アプリの同時表示でマルチタスクが捗るAndroidタブレット「LAVIE Tab T12」

 「LAVIE Tab T12(T1295/DAS)」(以下T12)は、NECパーソナルコンピュータが3月17日の発売を予定するAndroidタブレットだ。実売予想価格は10万2,080円前後の見込み。【この記事に関する別の画像を見る】 LAVIEブランドのAndroidタブレットは、手に取りやすい価格帯でスペックもそれに応じたミドルレンジかローエンド、というラインナップのイメージが強い。だが、2021年3月にはSocにSnapdragon 730Gを採用し、11.5型の有機EL(OLED)ディスプレイを搭載した「T1195/BAS」、SoCがSnapdragon 662の11型IPS液晶ディスプレイ搭載モデル「T1175/BAS」など、ミドル~ハイエンドのラインナップ強化を図っている。 今回レビューするT12もこの流れを汲んだ、T1195/BASの上位版と位置付けられるタブレットだ。T1195/BASと比べて有機ELディスプレイのサイズが12.6型に大型化されたほか、SoCがSnapdragon 870、メモリが8GB、ストレージが256GBとそれぞれ強化。OSもAndroid 11にバージョンアップされている。 前モデル同様、ビジネス利用を想定したアプリや周辺機器も充実。複数のアプリをマルチウィンドウとして同時に表示できる「プロダクティビティモード」を搭載するほか、別売のスタンドカバー付きキーボードやペンを併用することで、AndroidタブレットをPCのように利用できる。 PC感覚で利用できるAndroidタブレットという観点では、Androidアプリが動作し、タッチ操作でタブレットとしても利用できる2in1タイプのChromebookに近い存在。公私に渡ってChromebookを愛用しており、本誌でも何度かChromebookのレビューを執筆している筆者としては非常に興味深い製品だ。 今回はChromebookユーザーとしての比較も交えながら、プロダクティビティモードやスタンドカバー、キーボードを含む製品の使用感をお伝えする。なお、発売前の試作品をお借りしている関係上、ベンチマークやバッテリといったスペックに関する検証は行なっていないことをお断りしておく。■ 軽量薄型で取り回しやすい本体。ケースはキーボード有無で2種類 T12本体のサイズは285.6×184.5×5.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約565g。本体は6mm以下と非常に薄く、オプションのキーボードとスタンドカバー装着時も最薄部は実測値で12㎜と、ケース装着時でも薄く持ち運びやすい。 本体に装着するカバーは、キーボードとスタンドカバーのセットと、キーボード部分がカバーになっているタブレットカバーの2種類がオプションとして用意されており、どちらのカバーも背面にペンを収容するスペースが設けられている。背面カバーはペン収納部だけ開くことができ、ペンにもマグネットが内蔵されているため、背面を見ずとも手探りでペンの取り出しや収納が可能だ。 オプション品の重量は本レビューの執筆時点で公開されていないため、筆者の環境で実測したところ、スタンドカバー装着時の重量が713g、スタンドカバーとキーボード装着時の重量が994g、タブレットカバー装着時が773gだった。 ペンの重量が実測値で13gなので、スタンドカバーとキーボードにペンを装着するとギリギリ1kgを超えてしまうが、約12型クラスのキーボード付き端末としては十分に軽量と言えるだろう。■ 指紋認証/Wi-Fi 6を搭載したハイエンドスペック スペック面では前述の通りSoCがSnapdragon 870、メモリが8GB、ストレージが256GBと、Androidタブレットとしてはハイエンド。microSDXCカード対応なので、外部ストレージに利用できる。 有機ELディスプレイの解像度は2,560×1,600ドットで、最大輝度は600cd/平方m、リフレッシュレートは60~120Hzの可変リフレッシュレート。HDR10+、Dolby Visionにも対応している。音響面でもDolby Atmos対応のスピーカーを左右2個ずつ搭載するクアッドスピーカー構成で、映像と音質面でも充実のスペックだ。 本体左側面には上部に指紋認証センサーを兼ねた電源ボタン、中央にmicroSDカードスロットを搭載。左側面は中央に充電やデータ転送に利用するUSB Type-Cポートを搭載。本体上部は左端に音量ボタンと、ボタン類が上下左右に割り振られている。 通信面ではWi-Fi 6、Bluetooth 5.2を搭載。センサーは加速度、電子コンパス、近接、照度、ジャイロ、TOFを搭載する。 カメラは背面カメラが約1,300万画素でオートフォーカスのカメラと、約500万画素で固定フォーカスの広角カメラという2眼構成。前面カメラは約800万画素の固定フォーカスカメラを搭載する。 バッテリ容量は10,200mAhで、駆動時間はWeb閲覧時で約10時間、充電時間は約2時間を公称。標準でACアダプタとUSB Type-Cの充電ケーブルが付属する。■ 広くて打ちやすいキーボード。無段階で倒せるスタンドカバーも便利 オプションのキーボードカバーは縦横が本体とほぼ同じサイズで、横幅も広く打鍵感は良好。キーピッチも実測値で約19mmと広く、キー中央にくぼみがあるため手元を見ずとも押しやすい。上部には音量や輝度、マイクのミュートやスクリーンショットに加えて、前述したプロダクティビティモード関連のショートカットが用意されているのも便利だ。 文字入力は標準でiWnn IMEを搭載しているが、筆者がAndroidで愛用しているATOKも問題なくキーボードで動作した。当然ながらタッチ操作によるフリック入力も可能なため、長文をしっかり入力したいときはキーボード、外出時や動画鑑賞時などの簡単な文字入力はフリックと場面によって使い分けられる。 スタンドカバーは20度近くまで本体を倒すことができ、タッチ操作がメインの時に便利。タブレットカバーは無段階調整はできないが、ディスプレイ側のカバーを折り曲げることでスタンドとしての利用が可能だ。■ PC感覚でアプリを同時表示できる「プロダクティビティモード」 ホーム画面には独自の専用アプリ「info.Board」がウィジェットとして配置されている。info.Boardは最新ニュースや天気、カレンダーなどがタブ切り替えで表示でき、メールやカメラ、設定アプリへのショートカットも用意されている。 本製品最大の特徴であるプロダクティビティモードは、複数のアプリを同時に表示できる機能。通常のAndroidアプリは1画面に1アプリしか表示できないため、複数のアプリを見たい時はマルチタスクボタンでアプリを切り替える必要があるが、プロダクティビティモードは1画面に複数のアプリを同時に表示して、PCのような感覚で作業可能だ。 プロダクティビティモードは通常モードとは切り替えて利用する仕組みになっており、キーボードカバーのショートカットボタンや通知エリアのショートカットからプロダクティビティモードを起動できる。 プロダクティビティモードではAndroidの「ホーム」「戻る」「マルチタスク」といった標準機能が左端に表示され、現在起動しているアプリがその横に並ぶ。アプリの切り替えは画面下部のアプリをタッチしてもいいし、キーボードからAlt+Tabで切り替えることもできる。操作感としてはWindowsのタスクバーに近い挙動だ。 アプリ上部には全画面表示の切り替えボタンが用意されており、プロダクティビティモードを解除することなくタブレット的な利用が可能。また、アプリを左右にドラッグ操作すると画面半分のサイズにリサイズされる機能も用意されているなど、複数アプリを同時表示したいというニーズがしっかり捉えられている。これらの機能はキーボードのショートカットから呼び出すことも可能だ。 筆者は複数のアプリを同時に表示して利用できる便利さに惹かれて、ここ数年2画面のAndroidスマホを愛用しているほどのマルチタスク愛好家なのだが、そんな筆者にとってこのプロダクティビティモードは非常に魅力的な機能だ。 Webサイトを見ながら原稿を執筆する、メッセンジャーでやり取りしながらカレンダーアプリで日程調整するなど、複数画面の同時表示で享受できる利便性は非常に高い。ビジネス用途で考えるのならこのプロダクティビティモードは注目に値する機能だ。■ 手書き文字の自動認識も備えた充実のペン機能 オプションのペンは4,096段階の筆圧感知に対応しており、本体背面にマグネットで装着するだけで充電が可能。書き心地はなめらかで、手書きのメモ程度であれば十分な感度だ。 ペンを使った機能も充実。ペン側面のボタンを押すとメモやスクリーンショット、レーザーポインタ、拡大鏡、カメラを使ったドキュメント機能のショートカットが表示され、いちいちアプリを呼び出す必要がない。 メモ機能は手書きだけでなく、キーボードを使った文字入力や画像取り込みにも対応。手書きや画像、テキストの混在という点ではOneNoteに近いが、文字入力は好きな位置からではなくテキストエディタのように画面上部から始まる仕様で、テキストエディタ慣れしている筆者としてはこちらのほうが使いやすい。 OCR機能も搭載しており、手書きした文字をテキストとして入力してくれるほか、手書きだけのメモも一覧画面にテキストとして表示される。時間がないときにさっと取ったメモも後から見出しで簡単に探せるなど、細かいところまで機能が行き届いていると感じた。■ 2眼構成で充実のカメラ。有機ELとクアッドスピーカーで動画鑑賞にも最適 背面カメラはタブレットながら2眼構成と充実。タブレットのカメラは画質がそこまで高くない製品も多いが、本機の標準カメラは明るいところであれば十分に高画質。広角もあるため被写体が近い場所でも全体を撮影でき、カメラとしての利便性は高い。 ただし広角カメラは標準カメラほど画質は高くなく、暗い場所で撮影するとその差が如実に表れる。とは言えタブレットの利用シーンを考えればこの品質は十分と言えるだろう。 前面カメラも画角が広く画質は良好で、Web会議の用途では十分。なお、本機にオーディオ端子はないため、音を聞く場合はBluetoothヘッドフォンか、別売のUSB Type-C to 3.5mmヘッドフォンジャック変換アダプタなどが必要になる。 気になるのはシャッター音で、今まで使ってきたスマホやタブレットと比べても明らかにシャッター音が大きい。カフェで撮影しているとその音の大きさに隣の席の人が振り返るほどだった。試作機ということで製品版では異なる可能性があるが、もう少し音量が下がるとありがたい。 ビジネス用途が目立つ本機だが、有機ELディスプレイとDolby Atomos対応のクアッドスピーカーは映画鑑賞などのエンタメ利用にも最適。鮮やかなディスプレイと奥行きのスピーカーの音で、臨場感ある映画鑑賞を楽しめた。■ Chromebookと似た立ち位置ながら「Androidタブレット」であることが魅力 冒頭で言及した通り、本製品はPC感覚で使えるタブレットという点でChromebookに近い存在だ。実際に筆者も本機で日常の業務をこなしてみたが、実際に試してみると利用シーンはかなり似ているものの、実用面では違いを感じた。端的に言うならPCとして使うか、タブレットとして使うか、どちらの優先度が高いのか、という違いだ。 PCとして使うならやはりChromebookに軍配が上がる。PC相当のChromeブラウザを備えるChromebookは、多くのWebサービスをほぼPC同等で利用できるからだ。T12の場合、Webブラウザはスマホやタブレット表示になってしまい、Slackなどのサービスはブラウザ版で利用できず、アプリでの利用になってしまうため、視認性や操作面ではChromebookのほうが上だ。 一方、Chromebookは一部のアプリが動作しないなど、Androidタブレットとしては完全ではない。また、Chromebookはキーボード利用時のIMEがプリインストールのものに限定され、サードパーティーのIMEが利用できないが、T12は当然ながらATOKなどほかのIMEも利用できる。 IMEは文字変換の効率化という点で筆者が重視しているポイントでもあり、ATOKが使えるという点でもT12は魅力的な存在だ。 異なるアプリを複数表示できるという点ではChromebookも本機も変わらない。画面の整列や最大化という機能もChromebookでも利用できるため、マルチタスクという点ではどちらも同等と感じた。 ペン関連はT12の機能が非常に使いやすい。ペンでのスクリーンショットやレーザーポインタという機能はChromebookにもあるが、手書きとテキストに両対応し、OCRも搭載している本機のメモ機能は非常に秀逸。ペンを活用するユーザーであればこの機能は魅力的だろう。 基本的にはAndroidタブレットとして利用するが、ときには仕事にも使いたい、というユーザーならAndroidタブレットとしての動作が保証されているT12がいいだろう。一方、ビジネス用途の優先度が高ければPC相当のWebブラウザが利用できるChromebookのほうが向いていると感じた。■ Androidタブレットをビジネス利用したいユーザーに最適な1台 キーボードを装着してビジネス用途にも利用できるタブレットは様々な製品が発売されているが、T12はスペックの高さに加えてプロダクティビティモードやペン操作による充実の機能が魅力だ。 筆者はこれまで何度もAndroidタブレットやiPadでの業務にチャレンジしてきたが、マルチタスクやIME関連の機能が壁になって挫折してきた。その点T12はPCのようなマルチタスクを実現でき、IMEもATOKが利用できるのがうれしい。Androidタブレットの業務利用には魅力的な製品だろう。 10万円を超える価格はAndroidタブレットとしては高額だが、プロダクティビティモードはその価格の価値があると感じた。 また、サイズやスペックが少し下回るものの、冒頭で紹介した通り11型のラインナップもT12と同様にプロダクティビティモードを搭載しており、用途によってはこちらのモデルを選ぶのもいいだろう。

PC Watch,甲斐 祐樹

最終更新:Impress Watch

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