Sonos Roamが最高のワイヤレススピーカーだと思う理由(本田雅一)
海外では先行して発売されていた「Sonos Roam」の販売が日本でも決定した。メーカー希望小売価格は税込2万3800円となっている。Sonos公式オンラインストアおよびヨドバシ・ドット・コムで8月20日から先行予約受付を開始。8月30日から先行予約者への販売が始まり、その後、他全販売店舗での販売開始は9月30日を予定しているという。
実はこのSonos Roam、海外では2021年の春に発売されていた製品。海外版でも日本の技適を取得していたため個人的に入手し、一番のお気に入りワイヤレススピーカーとして使っていた。日本での発売がなかったため記事化は控えていたが、バッテリー内蔵のポータブルスピーカーとしては圧倒的ナンバーワンのおすすめ製品だ。
筆者がSonosのシステムを以前から愛用してきたこともあるが、それを差し引いたとしても予算が合わないという人以外、この製品を"選ばない理由"はないと思うほど気に入っている。
500〜600mlほどのペットボトルぐらいの大きさしかないSonos Roamだが、あらゆる場面で使いこなせ、サイズ以上の音質を備えている。そのうえ多様な接続方法、アシスタントサービスが利用でき、バッテリー駆動と防水機能を備えるのでアウトドアやお風呂の中でも楽しめる。
そもそもSonosとは?
Sonosのシステムを使うと、無線LANを通じて家中のオーディオシステムを同期させ、自宅LAN内に保存してある音楽やインターネットラジオ(その後はストリーミングサービスも)を自律的に再生でき、スマートフォンやパソコンの助けなしに音楽再生が可能になる。スピーカーを置いていけば、全てのユニットがどんどんリレーしてワイヤレスで繋がっていくのだ。同時に鳴らすこともできれば、好きな部屋だけで音楽を楽しむこともできるし、部屋ごとに異なる音楽を流すこともできる。
そんなシステムを17年も前には製品化し、洗練させてきたメーカーだけに、日本以外の市場での知名度は抜群だ。ワイヤレススピーカーといえばSonosと言えるほど定番アイテムになっている。
残念ながら日本への参入が遅かったため、彼らのシステムを自宅で使い始めたのは2019年のことだが、2004年のCESで彼らの製品を見てからというもの、その画期的なシステムには興味津々だった。その後、さまざまな進化の過程を経て世界中で使われるようになり、世界で最も多くのスピーカー製品を販売するようになったのだ。
最近のSonosのスピーカーは、AmazonがEchoを発表してから続くスマートスピーカーと"同じ機能を包含"している(GoogleとAmazon、両方のサービスに対応)が、ただのスマートスピーカーではない。スマートスピーカーとしての機能はSonosのごく一部でしかない。
……と、話がだんだんそれてきたが、そんなSonosのシステムに加わったバッテリー搭載のコンパクトな最新モデルがSonos Roamだ。
この製品は実に恐ろしい魅力を持っている。自宅を音楽で満たしたうえで、さらにアウトドアを含む移動先にもその体験を広げられる。念のために書き添えておくと、アウトドアではBluetoothスピーカーとしても動作する。ワイヤレススピーカーとしては一つの到達点に達したモデルと言えるだろう。
もし欠点があるとしたら、ひとつだけSonos Roamを入手しようと買い求めると、次々にSonos Roamを買い足したくなることだ。現に筆者の家にもホワイトとブラック、2つのSonos Roamが置かれている。
小さなペットボトル程度のサイズでバランス良い音質を実現
Sonosの製品は、それ自身が世界中のさまざまな音楽サービスを再生する能力を備えている。そのために独自のシステムとサービスが提供され、そのシェアの大きさから世界中の音楽配信サービスはSonosに積極的に対応している。この話は後半でするとして、まずはもっとシンプルにSonos Roamのハードウェアとしての特徴を紹介しておきたい。
サイズは高さ168mm、幅62mm、奥行き60mmで、ざっくり言えば500mlのペットボトルよりも少し小ぶりのサイズ。重さは430gとペットボトルより軽量だ。この中には、ワイヤレスLANとBluetoothなどのモジュールやアンテナ、マイクが内蔵されており、10時間以上の連続再生を行えるバッテリーも搭載している。
先にアウトドアでも、と記したように、IP67規格に準拠した防水性能を備え、水深1mまでならば30分以内浸水させても故障しない設計だ。実際に水の中に入れっぱなしにする人はいないだろうが、突然の雨はもちろん、プールや川の中に入れてしまってもある程度は大丈夫という理解でいい。
充電はUSB Type-C端子から行うが、縦置きした場合の底面にQi準拠の充電機能を備えているのでワイヤレス充電も可能だ。一般的なQi対応充電器が利用できるものの、Sonosは純正のワイヤレス充電器も用意している。純正ワイヤレス充電器はマグネットで正確にSonos Roamとの位置関係を整えるよう設計されているので、使い勝手は純正の方がずっと良くなる。
コンパクトかつ細身のため、例えばバックパックによく見られるペットボトルを入れるためのネットポケットにすっぽりと収まってくれる。また、縦置きと横置き(横置き時のゴム足も備えている)に対応し、置き方で微妙に変化する音質も自動的に切り替えるなど芸が細かい。聞き比べると、ほんの少しだけ縦置きのほうが音場が自然に広がるが、ほぼ同じと言って差し支えない。自宅内で置き場所を変えながら使いたい場合に、縦、横と自在に置けるのは使いやすい。
このように柔軟な使い方ができるSonos Roamだが、この使い方をさらに助けてくれているのが「Automatic Trueplay」という機能。Sonos Oneなど以前のモデルでは接続されているスマホのマイクでスピーカーが出すテストトーンを測定し、部屋の音響特性を計測、補正するTruePlayが搭載されていたが、バッテリー内蔵のSonos Moveでは内蔵マイクを用いた常時自動補正「Automatic Trueplay」へと進化していた。この仕組みがSonos Roamにも組み込まれているのだ。
置き場所を変えると加速度センサーが設置位置を変えたことを認識し、自動的に再補正をかけるので、音楽を楽しみたい場所に持っていき、縦でも横でも、好きな配置で置けば設計者の意図に近い音が再現される。
流石に超低域は再生できないものの、一般的なポップス曲ならば曲の雰囲気を損なわないどころか、十分にパンチを効かせたミッドバスを感じられる。そのうえ中域から広域にかけてもバランスよく、また歪感を感じさせない心地よい耳あたりの音を聴かせてくれる。
ワイヤレススピーカーの全ての要素がここに
Sonosのシステムは独自のサーバ機能を備えるソフトウェアを導入することで、パソコンで管理している楽曲データを共有できるが、この機能は今日、さほど重要ではないかもしれない。しかし、さらに世界中で展開されているインターネットラジオやストリーミング配信に関しては、その多くに対応しており、しかもパソコンやスマートフォンなしに単独での再生が行える。
例えばAmazon Music、Apple Musicなどはもちろん、SpotifyやTIDAL、Qubusなど世界中のよく知られているサービスはほぼ網羅されている。しかし、実は例外がある。それは日本のストリーミングサービスやインターネットラジオで、例えばradikoは直接再生できない。
これは日本への参入が遅かったため。多くの国と地域ではSonosがワイヤレスオーディオシステムのデファクトスタンダードになっている一方で、日本のサービスとの親和性はこれから上げていかねばならない段階だからだ。
しかし、その点も大きな心配はいらない。SonosのシステムはGoogle AssistantとAmazon Alexaに対応しているため、それぞれで利用できるスキルもそのまま利用できるのだ。例えば直接は再生できないradikoも、こうしたAIアシスタントのスキルを通じて再生させれば利用できる。さらにはAppleのAirPlay 2にも対応しているため、AirPlay 2に準拠する再生アプリケーションの全てに対応する。
そしてSonosがSonosである本来の機能こそが、複数のオーディオ機器がワイヤレスで同期、連携する仕組みである。色々な部屋に置かれたSonosのスピーカー(あるいはオーディオに接続する端末)が自動的につながり、自律的に連携をし始める。この時、重要なのは時間軸がピッタリと合わされること。複数のスピーカーをグルーピングし、同時に同じラジオチャンネルやプレイリストなどを再生するなどのマルチルーム機能が無線で構築されるのだ。専用アプリ(iOS/Android/Windows/Mac用がある)で再生したいスピーカーを選択すれば、それらから完璧に同期されて同時に同じ音楽が再生される。また、最後に再生していたラジオチャンネルやプレイリストも覚えてくれている。
筆者の住まいでは、ほとんどの部屋に新旧のSonos製スピーカーや端末が置かれているので、朝起きてSonos Roamの再生ボタンを押すだけで、生活エリアの全てが音楽で満たされる。
さらにSonos RoamではSound Swapという新機能も提案されている。これはSonosが置かれた別の部屋に移動した時、Sonos Roamの再生ボタンを3秒以上長押しするとその部屋にあるSonosにSonos Roamで再生中のコンテンツが移動するというもの。
もう一度同じ操作を繰り返すと、今度は手元のSonos Roamに戻ってくる。HomePod miniにも同様の機能があるが、Sound Swapの場合はUWBなどの新技術は使っていないため、過去のどのSonos製品とでも連携できる。
ちなみに、HomePodのステレオ再生のように2つのSonosスピーカーをペアリングしてステレオソースを再生することも可能だ(元祖はSonosなのだが)が、加えてSonosのシステムはサラウンドシステムをワイヤレスで構築したり、サブウーファーをワイヤレスで加えたりすることもできる。これは完璧な時間管理が行えることの裏返しでもあり、以前ならば構築が大変だったマルチルームのネットワークオーディオシステムが手軽に構築できてしまうということだ。
以前のSonosシステムで抜け落ちていたのがカジュアルに使いこなすためのBluetoothスピーカー機能だったのだが、前述したSonos Moveという製品から対応しており、Sonos RoamもまたBluetooth 5.0に対応するのでシンプルなBluetoothスピーカーとしても利用できる。屋外に持ち出した時には、むしろこのモードがもっとも活躍することだろう。
このように、ありとあらゆるワイヤレススピーカーの要素を網羅しているのがSonos Roamなのだ。
自宅の全てを音楽で見たし、出先にも同じ体験を持ち出したい人に
筆者の自宅には2つのSonos One(ステレオペアリングしてある)、書斎の机の上に置かれた2つのSonos Five、サブルームにある液晶テレビのサウンドバーとして使ってるSonos Beamがあるため、機器追加をするだけでシームレスにSonos Roamを利用できた。
白のSonos Roamはキッチンに、黒のSonos Roamは寝室に設置。朝、起きたら寝室のSonos Roamで再生ボタンをクリック、まどろみながら起きて家の中を移動すると、家の中の至るところ、生活空間の全てがいつもの音楽で満たされる。防水のSonos Roamだけに、その気になれば長風呂の際には浴室に持ち込み、洗濯物を干すときにはベランダに持ち出して音楽を聴きながらというのもいいかもしれない。10時間もバッテリーで駆動できるのだから、バックパックのドリンクホルダーに入れて音楽をかけながらウォーキングというのもありだ。
筆者のように旧製品も含めてSonosのシステムを持っている人は日本では少数派かもしれないが、まずはその高機能と音質を評価して1台から始めてもいいだろう。予算に余裕があるならば、2台買って2つの場所に置くのがおすすめではあるのだが、その場合、片方は据え置き型モデルでもいいかもしれない。
過去の経験から言えば、1台から始めたとしても満足の度合いに応じて買い足していけば、買い足すほどに豊かな体験が得られる。
過去に購入した製品が無駄にならず、自宅全体のネットワークが自然に連携し、それぞれ置かれた場所、製品の特徴によって活躍してくれる。ちょっとしたSonos沼とも言えるかもしれないが、過去の投資が無駄にならないという言い方もできるだろう。
ワイヤレススピーカーというカテゴリで言えば、他に明確なライバルが思いつかない。とりわけコンパクトな製品ならなおさらなのがSonos Roamだ。