現行スズキ・アルトワークスに積まれるエンジンは、ドコが凄い?|Dr.SUZUKIのワークス歴史講座_Vol.9
現行スズキ アルトワークスのエンジンルーム内部。エアクリーナーとインタークーラーへの導風には専用インレットダクトが装備され、外気を積極的に取り入れる構造となっている
現行のアルト ツインカムターボワークス。DOHC4バルブ3気筒ターボエンジンの搭載は、初代から続く伝統だ。5代目は既存の改良型R06Aにチューニングを加えて専用化。トランスミッションにも専用チューンを施し、スズキの誇るエンジン特性と見事に連携させた。人気連載・週刊【スズキ・アルトワークスを語り尽くす】。ワークスを語り始めたら終わらない(?!)スズキ博士の “ワークスの歴史” を繙く連載、第9回。TEXT / PHOTO:スズキ博士(Dr. SUZUKI) PHOTO:REV SPEED / SWIFT MAGAZINE with ALTO WORKS
改良型R06Aエンジンはスズキ車の多数に搭載
1/4第9回目となる今回は「パワートレーン編」
写真:Motor-Fan
改良型R06Aもエアクリーナーケース、インタークーラー類がエンジン上にある。小型、軽量、搭載性を追求。ちなみにブロックにはK6A型とは異なり、クランクキャップが存在する
中央がエキマニ部の排気口で、3気筒分の排気が集まる。ターボの排気入口がここにつく。タービンまでの経路は最短、排気のエネルギーを効率的に使え、低速からターボが本格稼働
現行アルトワークスに搭載されるエンジンは、K6A型に続くオールアルミ製だ。改良型R06Aエンジンは、多くのスズキ車に載る一種の汎用ユニットだが、メカはDOHC4バルブ3気筒ターボである。ボア64.0mm×ストローク68.4mmの比は、歴代ワークスに載るエンジンのなかでは最長ストロークだ。圧縮比も9.1と、ワークスのDOHCヘッドではいちばん高い。そのヘッドはバルブがカム直打式。そして、ポートの形状と流路の角度、燃焼室の形状と冷却性が煮詰められている。エキマニもヘッドと一体。こうした仕組みがベースのR06Aからの進化であり、改良型の名のゆえんである。装着ターボはIHI製RHF3型で、風量は4代目と似るものの効率に優れる最新だ。タービン側のA/Rは6で、エンジン本体の特性に合わせた仕様といえる。
ECUと冷却系が専用。トルクバンドは常用域
1/3写真:Motor-Fan
現行スズキ アルトワークスのエンジンルーム内部。エアクリーナーとインタークーラーへの導風には専用インレットダクトが装備され、外気を積極的に取り入れる構造となっている
新しくて高効率。排気量が大きい。ストロークが長い。制御がち密。条件が揃うほど低中速トルクが太くなる。ゆえに改良型R06Aは、低回転から6000rpmまでの実用域がとても優れる
改良型R06Aの特徴としては、VVT吸気側可変バルブタイミング機構と電子スロットルもある。そう、4代目の初期に備わった機能だ。36ワークス専用としては、まず冷却系。燃焼温度の安定化などに、サーモスタットの開弁温度がターボRSの88度から82度に下げられた。次にエンジンルームへの外気導入だ。じつは、フロントグリルのWORKSエンブレムにはスリットがつく。そこから走行風を取り入れ、熱だまりに当てようというわけだ。そして、以上を生かす専用プログラムのECU。アクセルレスポンスが、ターボRS用より敏感で速い。ブーストは過給圧制御によって低回転では約0.9kg/cm2かかる。7200rpmレブで最高出力が64ps/6000rpm、わずか3000rpmで最大トルク10.2kgmに届く。そのトルク値は対ターボRSの0.2kgmアップで、現行スポーティモデルではトップのトルクウエイトレシオなのが自慢。コレがワークスの加速偉力の源なのだ。
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