• 22/06/2022
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じん「良いといってもらえると生きた心地がする」音楽を続ける理由:インタビュー

 音楽活動10周年を迎えるじんが2月16日、1stミニアルバム『アレゴリーズ』をリリース。同作は2021年8月15日に、アルファポリスCM『終わりなく拡がる世界』タイアップとして公開された『後日譚』を含むオリジナル楽曲全6曲とインストゥルメンタル3曲を含む全9曲を収録。初回限定盤Aは、 昨年12月10日に公開された新曲「GURU」他、ボーカロイドソフトなどを利用して再録された「消えろ」「ZIGI」「MERMAID」「FREAKS」を含む全5曲を収録。 初回限定盤Bは、活動10年間に提供した楽曲の中から、「Into the blue’s」「Life is tasty!」「ステラ」「オ ントロジー」「プルメリア」のアコースティック・セルフカバーを収録。 また、アニメイト完全数量生産限定盤は、じんが歌唱する「GURU」を収録した。インタビューでは、音楽活動10周年を迎えるじんに、ここまでの活動の歩みを振り返りながら、自身にとって歌うこと、音楽とはどんな存在なのか、話を聞いた。【取材=村上順一】

じん「良いといってもらえると生きた心地がする」音楽を続ける理由:インタビュー

ボカロの良いところは“感情がない”

――この10年は長かったですか? 不思議なもので長かったと思う瞬間と、あっという間だった瞬間が混在していましたが、めちゃくちゃ長かったです。すごく密度が濃かった10年だったなと感じています。――『カゲロウプロジェクト』はターニングポイントですよね? そうですね。それを作ってから加速度的に“ものを作る”という道に入っていた感覚があります。――すごくプログレを感じました。 めちゃくちゃプログレ大好きです! ピンク・フロイドとか。あと、ザ・フーのようなモッズバンドも好きで、特にモッズは『カゲロウプロジェクト』でやりたかったことに近かったんです。モッズは音楽の形態というだけではなくて文化も担っていて、モッズコートやバイクなんかもそうですよね。――そういった昔のアーティストや楽曲はどこから知ったんですか? 父が衛星チャンネルに登録していて、そこでピート・タウンゼントを観て衝撃を受けました。その時にギタリストはデカくなければダメなんだと思ったり(笑)。そこからロックオペラに興味を持ちました。――同級生とはあまり話が合わなさそうですね。 全然合わなかったですね。邦楽だとTHE BACK HORNがすごく好きなバンドで僕の金字塔です。小説というところで言えば筋肉少女帯の大槻ケンヂさんの歌詞からすごく影響を受けています。大槻ケンヂさんはすごく文学的なんですけど、小説というよりもこれは歌舞伎なんじゃないか、と思ったり。そういったものをベースに僕はボカロというファクターがあるという感じです。――そのボカロというところで、アプリ自体の進化はどう感じていますか。 ここ最近はすごいですね。可不/KAFUはすごく声のノリも良いですし、表現の幅が広がりました。ボカロでこの言葉は使いにくいというのもあるんですけど、それをなくしてくれたと思っています。それはすごく衝撃的でした。――ボカロPをやる前はバンドをやっていたんですよね。 もともとロックバンドをやっていて、レディオヘッドやシガー・ロス、そしてビョークに行くような感じのバンドでした。とにかく当時の僕らは人気がなくて、お客さんも2人で1人は母親みたいなライブをやっていました(笑)。――ライブを観たお母さんからの感想は? 母は僕が何をやっていても何も言わないんですよ。健康で元気にやっていればいいみたいな。結局そのバンドは空中分解してしまったので、就職することにしました。忙しくて音楽もできず、ライブハウスにも通えなくなってしまった時にボカロを知りました。――知人から勧めてもらったんですよね? 専門学校時代の友人のお兄さんがボカロPをやっていて教えてもらいました。「初音ミクを知っているか?」と聞かれたのですが、僕は知らなかったので「アニメは見ないので…」みたいなことを答えたら「バカやろー」と怒られて(笑)。その後にsasakure.UKさんの「タイガーランペイジ」という曲を聴いて、感動して。――その中で感じたボカロの魅力とは? ボーカロイドで最初にいいなと思ったところが“感情がない”というところでした。なんかボコーダー(ロボット・ボイスのようなサウンドを作るエフェクター)みたいなものという感覚でした。なので、感情をあえて乗せない歌、メロディーがある小説みたいなものとかいけるんじゃないかと思って。 例えば大槻ケンヂさんが歌うと個性が強いので文学とはまた違う感じになるんですけど、それをボカロに歌わせることでオペラっぽくなるんじゃないかなと思いました。それでザ・フーみたいなことも出来るし、メンバーもいないから自分の好きなことが出来ると思って。僕の中では歌う小説家みたいな感覚なんです。――その感情がないところが面白いと思えたのは、すごいです。 全てはsasakure.UKさんのおかげです。歌が上手い、下手という一般的な概念よりもズバ抜けてメロディが良い、オケがカッコいい、歌ものだけどインスト的な感じもあるなと思って。人が歌ってしまうと重ったるくなってしまうものでも、ボカロで表現すると人が歌うよりもどこかスマートになるような感覚はあります。

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