エンドユーザーにまで寄り添う、真のLTVマーケティング――株式会社Macbee Planet
次代を担う成長企業の経営者は、ピンチとチャンスが混在する大変化時代のどこにビジネスチャンスを見出し、どのように立ち向かってきたのか。本特集ではZUU online総編集長・冨田和成が、成長企業経営者と対談を行い、同じ経営者としての視点から企業の経営スタンス、魅力や成長要因に迫る特別対談をお届けする。
今回のゲストは、株式会社Macbee Planet(マクビープラネット)代表取締役の小嶋雄介氏。同氏に創業から現在に至るまでの沿革や、独自に築き上げた競争優位性、思い描く未来構想などを伺った。
(取材・執筆・構成=丸山夏名美)
(画像=株式会社Macbee Planet)小嶋 雄介(こじま・ゆうすけ) 株式会社Macbee Planet代表取締役1984年、神奈川県鎌倉市生まれ。大学卒業後、総合広告代理店に就職。幅広くメディアプランニングを経験。2013年、デジタルマーケティング会社の広告事業責任者として、事業を立ち上げる。15年8月に株式会社Macbee Planetを設立、LTV予測力・コンサルティング力・LTV向上力を強みとして、データを活用したマーケティング分析サービスを提供。最先端のテクノロジーを駆使し、集客にとどまらずユーザーとの関係性向上を目的としたLTVマーケティングを幅広い分野で展開している。冨田 和成(とみた・かずまさ)株式会社ZUU代表取締役神奈川県出身。一橋大学経済学部卒業。大学在学中にIT分野で起業。2006年 野村證券株式会社に入社。国内外の上場企業オーナーや上場予備軍から中小企業オーナーとともに、上場後のエクイティストーリー戦略から上場準備・事業承継案件を多数手掛ける。2013年4月 株式会社ZUUを設立、代表取締役に就任。複数のテクノロジー企業アワードにおいて上位入賞を果たし、会社設立から5年後の2018年6月に東京証券取引所マザーズへ上場。現在は、プレファイナンスの相談や、上場経営者のエクイティストーリーの構築、個人・法人のファイナンス戦略の助言も多数行う。価値提供にこだわり、成果報酬型マーケティングに挑戦
冨田:非常に幅広いビジネスを展開されていますが、創業から現在に至るまでの変遷を教えてください。
小嶋:弊社は2015年に創業して、マーケティングとテクノロジーを軸に事業を展開しています。私自身、実は小さい頃は飽き性で何事も結果が出ないとすぐに投げ出してしまう性格でした。夢中になれるものが何もない若者だったのですが、社会人になり出会ったマーケティングや広告は時間を忘れるほど、めちゃくちゃ熱狂できたんです。
就職した広告代理店では、CM制作やタレントキャスティング、PRイベントなど幅広いメディアプランニングに携わりました。自分に合っている最高の仕事でしたが、キャリアを重ねるうちに、広告やマーケティングの代理店は儲かっても、クライアントさんが儲からないことが多いことに疑問が湧いてきました。
もっとクライアントさんに寄り添ったサービスを提供したい。そう考えた結果、現在取締役の松本と一緒に、当時まだ珍しかった成果報酬型のマーケティング企業を立ち上げることにしました。
ビジネスはタイミングが命。「マーケティング×テクノロジー」が時流にのる
冨田:クライアントさんへの価値提供にこだわったからこそ、成果報酬型のマーケティング事業が生まれたんですね。そこからどのような軸で、サービスを広げてきたのでしょうか。
小嶋:私は事業の成功には、タイミングが非常に重要だと考えています。社会の流れより数年前だと早すぎて誰も見向きもしないけど、逆に数年後にはリーディングカンパニーが独占しているビジネス。特にスタートアップはそのようなマーケット選定がめちゃくちゃ重要です。
そして、マーケティング領域で広告コスト(CPA)のみならず顧客の質(LTV)にも注目が集まっていくことは、2015年当時から明確に想像できました。それなのに、この両方に注目している企業はほとんど存在しなかった。創業時から腹をくくり、このマーケットで一点突破することにしました。他のビジネスには目もくれず、CPAとLTVに焦点を当てたプロダクト開発に全力を注ぎました。
他社とは一線を画す「LTVマーケティング」とは
冨田:事業領域を広げていくと、どうしてもレッドオーシャンになったり、競合が増えたりすることが多いのですが、その中での競争優位性、コアコンピタンスはどこにあるのでしょうか。
小嶋:弊社の強みはデータやテクノロジーを他社と違った視点で蓄積し、解析している点だと思います。CRM(カスタマーリレーションシップ)をしっかりと行った先に、顧客獲得があり、その後にナーチャリングした結果としてLTV(ライフ タイム バリュー)につなげるという考え方は以前からありました。ただ、データを効率的な活用すればコンバージョンする前の段階でも、ユーザーが長期的なファンになるかどうかふるいにかけられると考えています。
複雑ですが、クライアントさんの持っているデータと弊社が保有するデータを組み合わせて、どのくらいのLTVになるか予測解析していけることが強みです。成果報酬型の広告会社やマーケティング会社は他にもありますが、KPIをCV(コンバージョン数)やCPA(獲得単価)に置いていることが多いです。これらも大事ですが、労力やお金をガンガン投資して、CVを上げても1回、2回しか継続購入しなかったら赤字で終わってしまいます。
弊社は本当に長く続くお客さまになるのか、LTVも軸とする「LTVマーケティング」がお客さまから評価をいただいています。
冨田:CVやCPAだけでなくLTVも軸に置くことで、マーケティングエコノミクスを変革してきたわけですね。お客さまに寄り添った結果、ここまでやることで他社とは全く違うフィールドで戦えている。確かにここまでしている企業はほとんどありません。
小嶋:お客さまに支持していただけるのは本当にありがたいことです。弊社は大きく分けてアナリティクスコンサルティング事業と、マーケティングテクノロジー事業の2つがありますが、前者はデータドリブンの事業で、さらにそれを下支えしているのが後者の事業です。
自社プロダクト「Robee」、データ解析プラットフォーム「ハニカム」、さらに「Smash」というツールがありますが、得られるデータの種類が全く異なります。これらをマージして、分析することでアセットにつなげています。
冨田:競争優位性について、非常に分かりやすくお話いただきありがとうございます。この優位性は、新しくこのマーケットを狙ってくる企業の参入障壁にもなり得るのでしょうか。
小嶋:参入障壁になると考えています。ツールごとに取れるデータが異なるだけでなく、それらを合わせて分析するのは、とても難しいことです。
弊社はデータサイエンティストが莫大なデータをもとに、それぞれのクライアントに合わせて分析を行っています。データだけでなく、どのようにカスタマイズして分析するかのノウハウも蓄積されてきているはずです。
ただ、現在に甘んじることなく今後も取得するデータ、分析方法を変革して、さらに強みを尖らせていきたいです。
さらに先の「ゼロパーティデータ」にも注力
冨田:決算資料では「ゼロパーティデータの需要」について触れている点が印象的でした。Googleをはじめとするサードパーティの規制からファーストパーティ、そしてゼロパーティが注目されていますが、この部分について一つのキーワードと思うのでお聞かせください。
小嶋:時代の流れとして遅かれ早かれ、個人情報保護などの関係で取得できるデータの制限は必ず訪れます。何かしらの制限があった後に対応しても遅すぎるので、個人情報に当たらないユニークなデータをどのように取得していくのか、可能な限り早く動いていく方針です。
データは取得するだけなら誰でも簡単にできてしまいます。その中で自分たちでしかできないデータをしっかりクレンジングすることを大切にしています。
「ゼロパーティデータ」の例で言うと、解約時のエンドユーザーさんはクライアントさんでさえ知り得ない思いや解約の理由を語ってくれることが少なくありません。その生のデータを活用すれば、クライアントさんにとってもエンドユーザーさんにとっても、より多くの課題を解決できるはずです。
切り口を変えて、多くの領域でナンバーワンを取る
冨田:今後の時流に乗って、さらにエンドユーザーさんの受ける価値まで考えての事業構想は投資家にとっても非常にワクワクするストーリーです。このストーリーを創ってこられた経営者としての個性はどんなところにあるのでしょうか。
小嶋:私はどちらかというと地味な性格なんです。壮大なビジョンを描いてそれを伝えるよりも、目標を掲げコツコツ一つひとつ達成し証明していくことが得意なタイプ。日々の積み重ねも、クライアントさんやメンバーとの信頼関係や夢の支援にとって重要だと信じています。
その気質が、今取り組んでいる事業にも合っているのだと思います。データから傾向を分析をする、数値の変化から改善点を発見する。一見地味ですが、売上に与えるインパクトは、年間数億〜数十億円にもなります。そんな事業は日本に1万7,000あると言われている職種の中でもトップクラスで自分に合っていると思います。
冨田:職人気質のこだわりがあるからこそ、クライアントさんが求めるツールが生み出されるのだと感じます。事業を展開するうえで、他にこだわりはありますか?
小嶋:ナンバーワンを取ることは大事にしています。広告業界でナンバーワンというとすぐにはイメージしづらいですが、「LTVマーケティング」領域や「成果報酬型マーケティング」でと、切り口を変えても様々なナンバーワンが存在します。ナンバーワンと2番手以降は圧倒的な差があります。ステークホルダーからの信頼度、人材採用、社内コミュニケーションなど全てにおいて圧倒的優位に働きます。
真の意味でのLTVが叶えられる社会へ
冨田:最後に今後取り組んでいくことや、思い描く未来構想についてお聞かせください。
小嶋:LTVをさらに追求していきます。ここから数年後、LTVというキーワードは日本やグローバルにおいても今以上に注目されると考えています。多くのプラットフォームやメディアが乱立し、人々は情報を処理しきれません。そうした中、エンドユーザーが思わず長く愛用したくなる最適なサービスを提供し続けられる存在です。クライアントさんだけでなく、その先にいるユーザーさんのことを考えてサービスを提供していくことが、結果として社会的な価値を生み出すはず。LTVと言うとB向けと捉えられますが、本当の意味での個人レベルでもLTV(ライフ タイム バリュー)にこだわる会社でありたいです。