iPhoneでも操作可能なソニーのBDプレーヤー「BDP-S370」
レンタル店などでもスペースを拡大しつつあるBlu-ray Disc。DVDを置き換えるには程遠いものの、7月のビデオ市場の出荷実績では金額ベースで約2割(19.2%)を占めるなど、かなり認知と普及が進んできた。
また、レコーダ市場においては既に昨年前半から過半数がBDレコーダになっている。BDプレーヤーも3万円以下のプレーヤーが増えてきたことから、2009年度出荷実績で12万8,000台と大幅に伸びた。ただし、まだ高価だったり、「画質はいいけど、動作が遅い」など、DVDからBDになったが故の不満も聞かれる。
ソニーが今回発表したのは、エントリーモデルながら、動作を高速化した点をアピールした「BDP-S370」。実売価格は25,000円と安価だが、機能的にはUSBやSACD再生対応など充実。さらに、ローディングなどの動作速度を従来モデルから大幅に向上したという。
大きな特徴は、Xperia(SO-01B)などのAndroid端末や、iPhone、iPod touchをリモコンにできること。単にiPodリモコンという点では、パイオニアのBDプレーヤー「BDP-LX53/330」や、AVアンプ「VSA-LX53」や「VSA-1020/920」などの事例もあるが、新たにAndroidに対応したことに加え、ソニーによるiPod touch/iPhone対応製品という点も大きなポイントだ。
ソニーのオーディオ製品は、海外市場ではiPod/iPhone対応製品も多く発売されていたが、ウォークマンのシェアの高い国内では発売されていなかった。しかし、7月にはiPhone/iPod対応スピーカー製品を発売するなど、国内でも対応製品が増えており、BDP-S370もそうした流れの一環と考えられる。
動作の高速性とともに、スマートフォン対応を謳う新BDプレーヤーをテストした。
■ インパクトのある“薄さ”
BDP-S370は、ソニーBDプレーヤーのエントリーモデルとなる製品。本体の特徴は薄型のボディで、高さは従来モデルのS360に比べ約35%減で業界最薄という36㎜。液晶テレビBRAVIAなどと共通した「モノリシックデザイン」を採用したとする。外形寸法は約430×219×36㎜(幅×奥行き×高さ)。重量は約2kg。
実際にパッケージを開封してみると、確かに薄さと奥行きの短さに驚く。「BDプレーヤーもコモディティ(日用品)になったなー」という感慨を抱いてしまうほど。本体の仕上げは悪くは無いが、それほど高級感があるわけでもなく、値段相応の質感。やはりエントリー機という印象だ。ただし、背面のネジなど部品点数は多い。
再生可能なディスクはBDビデオ、BD-R/RE、DVDビデオ、DVD±R/RW、DVD±R DL、音楽CD、SACD(ステレオ)、DTS-CD、CD-R/RWなど。この価格帯でSACD対応というのは魅力的だし、比較対象となりそうな現行PlayStation 3に対するアドバンテージの一つといえるだろう。ただし、残念ながらBlu-ray 3Dの再生には対応していない。
BDP-S370 | トレー部 | 奥行きも219mmと短い |
前面にUSB端子を装備 | 背面。HDMI出力や光/同軸デジタル出力を装備する | 背面のUSB端子は無線LANユニット接続用 |
リモコン |
USB端子も2系統(前面1/背面1)備え、USBメモリやUSB HDD内の動画/音楽/静止画ファイルも再生可能。背面を見てみると、HDMI出力は1系統で、1080 60p/24pに対応。Deep Colorもサポートする。HDMI CECのブラビアリンクも利用可能。HDオーディオのデコード/ビットストリーム出力に対応する。Ethernetを備え、BD-Liveにも対応する。別売のUSB無線LANアダプタ「UWA-BR100」により、無線LAN接続も可能。
HDMI以外の出力端子はコンポーネント/コンポジット映像と、光/同軸デジタル音声、アナログ音声(RCA 2ch)を各1系統搭載している。消費電力は22W。待機時消費電力は0.1W(高速起動/HDMI機器制御「切」時)。リモコンが付属する。
■ 起動速度やローディングも高速化
UIはソニー製品共通のXMB |
UIは、ソニー製品おなじみのXMB(クロスメディアバー)。ビデオ、ミュージック、フォトなどの項目も用意しており、ディスクのほか、前面のUSB端子に接続したUSBメモリ内の動画や音楽ファイルの再生も可能となっている。対応フォーマットは動画がAVCHD、MPEG-1/2、MPEG-4 AVC/H.264、VC-1、WMV、音楽がリニアPCM、MP3、AAC、WMA、静止画がJPEG。
特徴は薄型のデザインとともに、ローディング時間や起動時間を短縮したこと。特にローディングについては、従来モデルBDP-S360比で約50%短縮したという。
実際にPlayStaiton 3(初代)と、パナソニックの「DMP-BDT900」とローディング時間を比較した。テストに使ったディスクは、「アイス・エイジ 3」のBlu-ray 3D(DMP-BDT900購入者向けの非売品)と、マイケル・ジャクソン「THIS IS IT」だが、いずれのディスクでも、BDP-S370が最も早かった。
【動作速度比較】
- | BDP-S370 | DMP-BDT900 | 初代PS3(CECHA00) |
アイス・エイジ3 | 23.65秒 | 41.7秒 | 36.95秒 |
THIS IS IT | 20秒 | 39.7秒 | 36.3秒 |
BDビデオでは、タイトルによって特にBD-JAVAの処理速度に大きな違いが出ることが多く、一昔前のBDプレーヤーではディスクによっては再生開始まで数分待たされることもあった。S370のようにローディング動作が高速化されることで、DVDからBDへの移行で“悪化した”と感じていたポイントが、着々と改善されている点は歓迎したい。CDやDVDのローディングも早く、きびきびと動くのも好印象だ。
また、価格的に近いPS3(29,980円~)よりも速い、という点も大きなポイント。2009年6月にも当時最新の低価格プレーヤーを比較したことがあったが、その際はLGのBDプレーヤーを除いて、PS3より高速な製品は無かった。改めてこの1年のBDプレーヤーの進化が感じられるし、なにより“普通に”使いやすさを向上する機能強化として歓迎したい。
起動時簡については、高速起動ONで約5.4秒、OFFで約18.4秒(3回計測の平均値。電源ボタンONからXMB出画まで)となった。特に高速起動時のレスポンスのよさは、SACD/CDプレーヤーとして利用する場合にも重宝しそうだ。
■ 使える無線LANリモコン
操作はシンプルで、BDビデオの再生品質も良好。画質モードはスタンダード、明るい部屋、暗い部屋の3モードを用意している。また、モスキート、フレーム、ブロックの各ノイズリダクション(NR)も適用できる。HDMI接続時には基本的に各NRはOFFになっているが、好みに合わせて適用したい。
UIはソニー共通のXMB |
DVD「紅の豚」を見てみたが、アップスケーリング品質も優れており、2万円台と低価格ながらBD/DVDプレーヤーとして不満を感じることはほとんど無いといっていい。
付属のリモコン「RMT-B107J」もシンプルながら使い勝手は良好。特に便利なのは、[10秒戻し]、[15秒送り]の各ボタン。ちょっとセリフを聞き逃した時に10秒戻ったり、任意のシーンを選択する際に、チャプタを選んでから送りボタンを押しながらシーンを呼び出すなどの用途に重宝する。さらに、同ボタンの複数回押しにも対応し、15秒送りの場合は、15秒刻みで最高135秒までのスキップを指定できる。
iPhone 3GSでBDP-S370を操作 |
対応するスマートフォンはXperia(SO-01B)とiPhone。今回iPhone用のアプリをダウンロードしてテストしてみた。なお、Android用のアプリについてSO-01BやHTC DesireのAndroid Marketから検索してみたが、10日現在、まだ国内向けには公開されていないようだ。iPhone用はApp Storeに登録されており、今回テストしたアプリのバージョンは1.21。
アプリの設定はシンプル。Wi-Fiの接続設定後、アプリの登録メニューを立ち上げ、同時にプレーヤー側のXMBの[設定]-[通信設定]-[BD Remote機器登録]で、リモコンとして使用するデバイスを登録する。するとアプリ側にもプレーヤーの情報が登録完了される。
プレーヤー側でBD Remote機器登録 | アプリの登録画面 | アプリ側にリモコンを登録 |
シンプルリモコン。タッチパネルをなぞってプレーヤーのXMBなどを操作できる。画面下部でフルリモコンなどを呼び出し可能 |
アプリを立ち上げると、画面下部に[シンプルリモコン]と[フルリモコン]、[ディスク情報]、[設定]の各項目が現れる。
シンプルリモコンは、4方向のカーソルと、RETURN、OPTION、HOMEの各ボタンを用意。XMBのコントロールはこの画面が使いやすい。カーソルをタッチパネルでなぞり、任意の項目を選択し、中央をタップすると[決定]になる。さらに、オプションの画質設定などもここから呼び出せるので、大抵の基本操作がシンプルリモコン画面で可能となっている。
フルリモコンは、再生/停止やスキップ/バック、早送り/戻し、10秒戻し/15秒送りなどのボタンを備えた再生形操作の画面と、BDゲームなどに使える4色ボタンや字幕や音声設定が可能な画面、数字キー画面の3つの画面を選択できる。こまめな再生操作が要求される場合はこちらのモードを使いたい。
通常のリモコンのような赤外線接続ではなく、無線LAN環境を使った接続になるが、動作レスポンスは良好だ。通常のリモコンより、若干の反応の遅れを感じることもあるが、それもごくわずか。「シンプルリモコンでタッチパネルを使いながら、XMBの任意の項目を選択する」といった操作でもミスはほとんど発生しない。iPhoneなどの操作に慣れた人であれば、問題は無いと感じた。
また、スマートフォンがリモコンになることで、例えばリモコン(赤外線)が見つからない時のバックアップ用として活用できるなど、活用できるシーンは多そうだ。
フルリモコン。通常の赤外線リモコンとほぼ同等の操作が可能 | 字幕切替なども可能に | 10キーも装備 |
ユニークなのは、[ディスク情報]の画面。S370ではGracenoteのデータベースに接続し、再生したディスク情報を取得/蓄積できる機能があるが、この画面で作品の監督や出演者などの情報を確認できるのだ。
もちろん、BDの特典や本編のスタッフロールなどにも記されているものだが、テレビとは別画面で確認できるということもあり、利便性は高いと感じる。映画を見ながら、俳優の名前が思い出せない時など、映画本編を邪魔せず、スマートフォンでこうした周辺情報が確認できる。出演者のほか、監督やプロデューサー、再生時間やレーティング、ジャンル、簡単な解説などもここで読める。
加えて、タイトル情報をキーワードとし、YouTubeで動画検索できる機能も装備。映画のタイトル「Surf's up」で検索すると、Beach Boysの楽曲が出てくるなど、必ずしも一致するわけではないが、新たなコンテンツとの出会いが、アプリ上で用意されているのは面白い。
Gracenoteから取得したディスク情報も表示 | スタッフや解説なども読める | タイトル情報を元にYouTube検索 |
また、再生したディスクは、Gracenoteから情報をダウンロードして蓄積可能。過去の再生したディスクの情報も後日確認できるようになっている。なお、ネットワーク機能が充実しているS370だが、DLNAには対応していない。
Gracenoteからディスクの情報を取得し、閲覧できる | 再生ディスクの情報を一覧表示することも可能となっている。 |
■ 使いやすく、安価なディスクプレーヤーとして最適。3Dをどう評価するか
SACDの再生にも対応し、HDMI接続時にはマルチチャンネルSACDの再生も可能。SACDのDSD信号をPCM変換せずに、そのまま出力するDSD Outputモードも備えている。
価格的にも他社のBDプレーヤー入門機のほか、PS3(29,980円~)が競合となると思うが、PS3の最新モデルでは、SACD再生機能が省かれていることもあり、SACD再生を重視する人にとってはこの点も重要なポイントといえる。
エントリーモデルながら、機能は充実しており、さらには高速起動/ローディングなど、“使いやすさ”において、1年前のBDプレーヤーやPS3などと比較し、明確な利点があるといえる。「BDを積極的に楽しみたい」という人にとって、最も手に取りやすい2万円台のエントリーモデルの登場といえるだろう。
ただ、唯一不安点があるとしたら3Dに非対応ということ。3D BRAVIAが6月に発売されたものの、国内向けにはソニーからはBlu-ray 3D対応プレーヤーが出ていないのは気になるところだ。今秋にはプレーヤー上位モデルやレコーダも発売予定で、PS3も年内のアップデートで3D対応を予定している。また、海外では400ドルの3D対応BDプレーヤー「BDP-S1700ES」も発表されているので、今後このあたりの製品との価格差が購入を左右するポイントとなるだろう。とはいえ、3Dを考慮に入れなければ、今もっとも買いやすく、使いやすいプレーヤーのひとつといえる。