• 08/12/2022
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ドローンは日本のコメ作りの生産性を変えられるか

(AndreyPopov/gettyimages)

ドローンは日本のコメ作りの生産性を変えられるか

 縄文・弥生時代から継続し、日本の主要産業ともされるコメづくりとコメ産業は、実は世界と全く異なった経済環境の基に発展し、国際競争力を失ったと言える。成長産業としてのイノベーションを忘れ、世界に取り残されたガラパゴス化した産業となってしまっている。 その最たるものが不効率な栽培方法で、人手や時間をかけたために、まず価格設定で国際的に競争できないでいる。国もこの状態を改善すべく、先端技術の開発やその技術を取り込むスマート農業の開発と実証を近年、進めているが、その成果には疑問符が残る。 筆者は、アメリカでコメ作りやコメの販売に約25年携わり、その間、世界のコメ作り技術も学んだ。約10年前に日本に戻り、この国のコメ作りを学び直した。最新のツールを使って安価なコメ作り技術を考え、実際に検証してみた。

日本〝独特〟の移植栽培

 日本のイネ栽培(コメ生産)は、ニュース映像などでよく映し出される「田植え作業」のような移植栽培を中心としている。しかし、世界に目を向けると、イネ栽培地帯での作付け方式は、圧倒的に直播(じかまき)栽培による生産が多いのだ。 米国南部やオーストラリア、南米のコメ生産国であるブラジル・ウルグアイ・アルゼンチンや、小面積ではあるが、ボリビア・ペルー・コロンビアなどで、乾田直播(かんでんじかまき)栽培がとられている。日本では、直播栽培が過去最大の作付面積になっているものの、全体の2%の2万~3万㌶にとどまっている。 直播栽培には、大きく分けて乾田直播と湛水直播(たんすいじかまき)の2通りある。乾田直播とは、水を張る前の乾いた田んぼに種を播き、土が持っている自然の力を引き出してイネ苗を育てる技術だ。湛水直播は、種を播く準備のできた水田に水を溜めて種を播くものだ。ともに移植栽培に必要な苗を育てる育苗箱やビニールハウスなどの育苗施設のコストを削減できる。 乾田に水を入れての栽培ができて、機械化された作業が可能な地域では、乾田直播栽培を選択しているのがほとんどだ。収穫も大型コンバインによる刈り取りと脱穀を同時に行い、収穫した籾を乾燥所で主に火力乾燥で仕上げる収穫方式を行っている。アジアの中では、移植栽培で生産している国もいくつかあるが、開発途上国の農村が貧しいために機械購入が容易にできず、しかも農村の若い労働者が都会や海外へ現金収入を求めて出稼ぎに出てしまうという要因によるものが多い。 世界の低コストコメ栽培は、種を直接水田に播きつける直播栽培である。苗を作り移植をする方式では苗づくりにかかる時間と、移植をするために関連する作業も併せて、コメ生産に多くの時間がかかり、生産コストは下がらない。では、なぜ、日本はあえて移植栽培を続けているのか。それは、高度経済成長期に若い労働力が農村から出たこと、国策でもある地方への工場誘致による兼業農家の増加にある。

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最終更新:Wedge