• 11/05/2022
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Q&A:「分散型自律組織( DAO )」とは? - 暗号資産投資家のためのクラブのようなもの

web3やブロックチェーンがどんどんメインストリームに溶けこんでいくにつれて、絶えず新しい略語が誕生しています。ですが、実はそれらが何を意味しているのかは、ほとんど説明されないままです。DAOもそのひとつといえるでしょう。

分散型自律組織(DAO:Decentralized autonomous organizations)は、クリプトエンスージアスト(熱心な暗号資産投資家)のためのクラブのようなもので、志を同じくする人々が共同で管理し、その意思決定において各メンバーが同等の発言権を持つ集まり、というだけのものです。そして、たいていのクラブが、どう対処していいかわからないほど多額の資金を持つ可能性を潜在的に秘めています。

ですが、DAOは分散型インターネット上のいたるところに出現。目的はさまざまで、より大きな企業への資金提供、ブロックチェーンを基盤とするプロジェクトのための資金調達、あるいは、先々著作権も入手できるとの誤った目論見から何百万ドルもかけてある本の初版を購入する、といったものもあります。いうまでもなく、これらの組織には多大なリソースがあります。そこで今回のQ&Aシリーズでは、DAOについて知っておくべきことを紹介していきます。

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――そもそも、DAOは何と発音するでしょう?

「ダオ」と読みます。

――では、DAOとは何ですか?

分散型自律組織(DAO)とは、その名のとおり、意思決定に際して中央で指令を下す管理者や企業を持たず集結した人の集まりのこと。スマートコントラクト(デジタル上で生成される一対一の契約)により、ブロックチェーン上に構築されるものです。多くの場合、各DAO独自のトークンを購入することでグループに参加でき、プールされた資金の使途や管理方法に関わる意思決定に投票することが可能となります。こうしたDAOのグループには世界中の人々が参加でき、メンバー間ではチャットサービスであるディスコード(Discord)のチャンネルを介して通信することが多いです。

暗号通貨専門の金融メディア企業ブロックワークス(Blockworks)の共同創設者ジェイソン・ヤノウィッツ氏によれば、DAOは「完全にフラットな階層」を持っており、「共有されたバランスシートを中心として集まった人を統治する、これまでとは異なる方法」なのだと言います。

Q&A:「分散型自律組織( DAO )」とは? - 暗号資産投資家のためのクラブのようなもの

――DAOは何をするのでしょう?

DAOは、独自の目的を掲げるなり、より大きなプロジェクトの一部を担うなり、それぞれに異なるミッションを持っています。

なかには、国際競売会社サザビーズ(Sotheby’s)から米国憲法の原本のひとつを購入する目的で2021年に結成された「ConstitutionDAO」のように、個人的な興味から発生したものもあります。結局、このDAOは最高入札額をつけることができず、最終的にオークションで勝つことはできなかったものの、メンバーは当初の出資金の払い戻しを受けることができました。

また、グループとして本質的な事業の運営が必要となるような、壮大な目標を掲げるものもあります。「Mantra DAO」がその一例でしょう。コミュニティが運営する分散型金融プラットフォームで、メンバーはそこで暗号資産の出資、貸付、借入を行うことができます。

――DAOが初めて作られたのはいつ?

最初のDAO(The DAOと呼ばれる)は、ドイツに拠点を置くスロックイット(Slock.it)という開発会社がイーサリアムのブロックチェーン上に構築したもので、物理世界のトランザクションをブロックチェーンに接続することで、参加者が不動産の賃貸、売買、共有を、中間業者を介することなく行えるようになっています。

スロックイットの創業者、クリストフ・ジェンツ氏の2018年のインタビューによると、2016年初め頃に資金調達の方法を模索していた同社が、同年4月にクラウドファンディングプラットフォームのキックスターター(Kickstarter)やゴーファンドミー(GoFundMe)に似たDAOを創設しました。このDAOで特徴的なのは、集めた資金を使う際の同社の意思決定に係る投票権を、すべての投資家とメンバーに与えたことです。

時を経るにつれてこのDAOは、ベンチャーキャピタルファンドのための分散型組織へと拡大し、当時存在していたイーサリアムの暗号通貨総額の約14%を保有していた、と英政治経済誌エコノミスト(The Economist)は伝えています。また米仮想通貨メディアのコインデスク(Coindesk)によると、2016年5月から6月にかけて1万1000人を超えるメンバーから1億5000万ドル(約165億円)を集め、2016年時点で史上最大のクラウドファンディングだったそうです。

ですが、2016年6月にこのDAOがハッキングされ、約5000万ドル(約55億円)を失いました(当時のレートで約360万ETH)。意外なことにスロックイットはハッキング被害のあとも解散しなかったのですが、このDAOがその後もとの状態を取り戻すことは一度もありませんでした。

――では、すべてのDAOは最初のDAOから枝分かれしてできたのでしょうか?

そうではありません。DAOという言葉はその後、ほかの企業やブロックチェーン、暗号資産投資家などのあいだで使われるようになり、ちゃんとした意味を持った名前というよりは、ただの記述上の頭字語になってしまっています。

――DAOはメディア業界やマーケティング業界にどのような影響を及ぼすのでしょう?

覚えておきたいのは、DAOは暗号通貨であれその他の形態であれ、多くの資金を保有していて、グループ内の過半数が納得し合意すれば、その資金を支出する用意があるということです。過半数のルールについては、各DAO内で定められています。

ブロックワークス(Blockworks)のような一部のパブリッシャーは、利益を生む可能性があると見込んで、すでにイベントスポンサーなどの広告機会をDAOに売り込み始めています。

「DAOは新たな仕組みになりつつある。100億ドル(約1兆1000億円)以上の資金を持つDAOも存在するのに、メディア企業はまだそのことを認識していない」とヤノウィッツ氏は話しています。現在、ブロックワークスのセールスチームに、DAOのディスコードチャンネル(Discord channel)への売り込み方を学ばせている最中なのだと言います。

DAOとweb3のもうひとつの付加価値は、コミュニティを構築できることだと、web3ベースのマーケティング会社セロトニン(Serotonin)の共同創業者でCEOのアマンダ・カサット氏は説明します。同氏は、DAOは「ユーザーまたはバイヤー、企業またはチーム、そして投資家といったカテゴリーを壊して、メンバー相互に提携しあうひとつのグループにまとめ、特定の成果物や経験を関心事として集まるコミュニティを構成させるための、強力な推進エンジン」であり、「(メンバーは)全員がともに参画している」のだと語っています。

[原文:WTF is a decentralized autonomous organization (DAO)]

KAYLEIGH BARBER(翻訳:SI Japan、編集:長田真)Illustration IVY LIU