• 04/05/2022
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新Wear OSで今のFitbitやGalaxy Watchユーザーはどうなる?

喜ぶのは、まだ早い?

Google(グーグル)はスマートフォン向けのAndroid OSに力を入れるだけでなく、早くからスマートウォッチ向けにAndroid Wearを提供してきました。3年前、それがWear OSへとリブランディングされたものの、その後の評価はイマイチ。しかしながら、今新たにSamsung(サムスン)が開発を進めてきたTizen OSならびにグーグルが買収したFitbit(フィットビット)と、いわば三位一体で新たに進化を遂げていく方針が示されました。果たしてこれは吉となるか、それとも凶となるか? 米GIZMODOのVictoria Song記者の考察をお届けいたしましょう。


そもそもWear OSには、このまま行くならば、もうだれも手がつけられないくらい暗い未来しかありませんでした。その主な要因は、Qualcomm(クアルコム)のSnapdragon Wearチップが期待はずれで、なかなか魅力的な新製品が出てこない点にあったでしょう。たとえばApple(アップル)やサムスン、フィットビットが、スマートウォッチ単独でセルラー通信機能を搭載したり、最新のヘルスケアやフィットネス性能、常時ディスプレイをオンにする仕様などを装備してきても、Wear OSでそれが実現するのはかなり遅れてからでしたよね。LTE通信機能を有するWear OS搭載のスマートウォッチが出てきたのは、ようやく今年になってから。Wear OSはサムスンとの提携で救われたといっても過言ではないでしょう。

理論的には、もうすべての関係者に幸せをもたらすプラットフォームとなりそうです。フィットビットはいまやノーブランドのチープなフィットネストラッカーが世にあふれ途方に暮れていたところを、高級スマートウォッチの新製品群を揃えられそうで一安心。グーグルがフィットビットから得られる貴重なユーザーのヘルスケア情報はいうまでもなく、これまでのスマートウォッチのハードウェア製造経験まで手に入れられます。サムスンはサードパーティー製の対応アプリが乏しい問題を抱えていましたが、それが解消されそう。一方のグーグルは、優れたTizen OSを手中に収められることになります。Androidユーザーは、ようやく指をくわえてApple Watchをうらやましそうに眺めなくて済むことに。もう全員がハッピーハッピーですよ~。

さらに混沌とした展開にも?

いまAndroid Studio Betaで走っている新たなWear OSのエミュレーションを見る限りでは、なかなか期待が持てそうではあります。現行のWear OSよりもパフォーマンスは高速化し、バッテリー寿命も延びて、LTE通信機能や優れたヘルスケア性能も実現しそう。ただ、それってそもそも現在のスマートウォッチには、当然のように求められることですよね? しかも、大きな乗り越えねばならないハードルは、まだ立ちはだかったままです。

新Wear OSで今のFitbitやGalaxy Watchユーザーはどうなる?

そもそも、ビッグブランドのグーグル、サムスン、フィットビットが、まさに三位一体でスムーズに統合したプラットフォームを作ったりできるのか? つまり、どのメーカーにもすでに今同社製品を愛用しているユーザーが多数いることに変わりはありません。

サムスンは公式ブログにて、現行のGalaxy Watchユーザーには、製品発売から3年間はソフトウェアサポートが継続して提供されるとの方針を発表しています。まだ発売されて間もない「Galaxy Watch 3」のユーザーは、ひとまず安心ですね。でも、「Galaxy Watch Active」や「Galaxy Watch Active 2」は、新たなWear OSが登場するころには、この発売後3年というサポート期限にかかってしまうことを意味しています。初代のGalaxy Watchユーザーに至っては、もはや切り捨て対象? こうしたユーザーがアップグレードで製品を使い続ける道はないのでしょうか? あとTizen OSに向けて、いろんなアプリを提供していたサードパーティーのディベロッパーたちは、いつ今のGalaxy Watchユーザーを見限ってしまうのでしょう?

そもそもグーグルでさえ、現行のWear OSのスマートウォッチユーザーへの対応を明らかにはしていません。新たなWear OSへと製品をアップグレード可能なのか尋ねてみたところ、グーグルの広報担当者からは「すべては新Wear OSの提供が開始されてからしか回答できない」との返事でした。たとえアップグレードが可能でも、それはかえって今わざわざ現行のWear OSのスマートウォッチを購入する意欲をそぐ展開でしかないのでは? さらに、Androidスマホと同様、いくらグーグルがアップグレードに積極的でも、メーカーが提供を開始するまでにはさらに時間がかかることも予想されます。今Snapdragon Wear 4100チップの新プラットフォームの提供がスタートしていますけど、搭載製品の発売についてはほとんど聞こえてきません。現状だと、まだこの状況は続きそうですよね?

フィットビットに関しても、現行のSenseならびにVersaモデルのスマートウォッチの扱いはどうなるのか? やはり明確には示されていません。ただフィットビットのスマートウォッチには、RTOSベースで独自のFitbit OSが採用されていますから、きっとサムスンのTizen OSを搭載するスマートウォッチほど、アップグレードの提供に期待はできないでしょう。でも、それはFitbit OSが、まもなくサポートを打ち切られてしまうということを意味しているのでしょうか?

グーグルとサムスンが手を結んで大丈夫なの?

今3社は、それぞれ「Samsung Pay」「Google Pay」「Fitbit Pay」といった、独自のブランドでサービスを展開してもいます。やっとFitbit Payを使い始めたばかりのユーザーが、1年もしないうちにサービスを打ち切られるなら、どんなふうに感じるのでしょう? サムスンなどは、Samsung Payに加えてヘルスケアの「Samsung Health」やAIアシスタントの「Bixby」を、スマートウォッチも絡めつつ独自に展開していますよ。

もちろん、とにかく3社のサービスを統合してしまうことは、技術的に不可能ではないでしょう。ただ、これまでこのようにスマートウォッチプラットフォームの統合などという話が、あまりなかっただけです。今どちらかというと、フラッグシップのGalaxy Watchユーザーは、サムスンのスマホのエコシステムへと取り込むためのターゲットとなっているのですが、これが変わるだけなのかもしれません。ユーザーからすれば、Bixbyの代わりに「Google Assistant」がGalaxy Watchで使えるようになると、かえってうれしいなんて本音もあったり?

これまでの資産をどうするのか? それは一時的な問題ととらえるべきなのかもしれません。これから新たなWear OSが整った後、フィットビットやサムスン、そのほかのWear OS搭載製品を購入する人たちには、何の問題もないでしょう。ただ現行のユーザーをむげに切り捨ててしまうのは、大失策につながる恐れもあります。もうこんなことなら、いっそのことApple Watchへ鞍替えするわという流れが、大きなうねりとなってしまう危険性だって十分にあり得るのですから。そういう意味では、今秋に出るWear OSには、これまでの不遇を挽回するための、最後のチャンスが与えられたと考えることもできるのでしょうね。

Source: Samsung