<ユースク>児童生徒端末、修理代は誰が? GIGAスクール構想
豊田市内の小学校から保護者に配布されたタブレット端末の補償に関する通知文=一部画像処理
全国の小中学校の児童生徒に一人一台のタブレット端末などを配備する国の「GIGAスクール構想」。二〇二一年度に本格活用が始まるが、「端末の修理代は誰が負担するの?」という不安の声がユースク取材班に複数寄せられた。高額な電子機器を子どもが日常的に扱う以上、故障や破損のリスクは避けられない。調べると、自治体によって異なる対応や、教育委員会と学校間の連絡不足など、修理を巡る混乱ぶりが浮かび上がった。 (宮崎厚志) 二月中旬、愛知県豊田市の複数の小学校が、端末の破損と補償に関する通知文を出すと、保護者に動揺が広がった。市による補償範囲が「児童生徒に過失のない破損(画面の割れは補償されない)」とあったからだ。文面通りなら、起こる可能性が高い「画面割れ」は過失の有無を問わず対象外となる。 不安の声を寄せた保護者のうち、軽度の発達障害がある小学一年の子どもを育てる三十代の母親は「うちの子はモノの管理が苦手。『補償がないなら使わせたくない』と母親同士で話している」と打ち明けた。 だが、取材を進めると、市教委と各校との連絡不足が原因で誤解が生じ、保護者宛ての通知文に誤りがあったことが分かった。豊田市教委は、学校内で適切に使った場合の破損や故障は画面割れも含めて市費で負担すると説明。持ち帰り中の学校敷地外での破損は保護者負担となるが、担当者は「今後充実した保険を紹介したい」と話した。だが、この母親によると、既に学校が勧めた不十分な保険に加入した保護者もいるという。 取材班には岐阜県中津川市の教員からも意見が寄せられた。「市教委から『保険加入を勧めてください』という指示が来た。近隣自治体が『保護者負担なし』と聞く中、うちが保護者に負担を求めれば春から現場は混乱必至です」。これも誤解だった。市教委が、補償対応の周知を徹底する前に、保険加入の案内を各校に通知したことが原因。実際は学校内で適切に使えば市費で補償される。持ち帰りの扱いについては現時点で決まっていない。GIGAスクール構想 個別に最適な学びを提供し、情報活用能力を育てるのが狙い。当初の配備完了目標は2023年度末だったが、新型コロナウイルスの影響でオンライン学習への対応が急務となり、20年度内に前倒しした。3月末までに全国の97・6%の自治体で配備が完了する。
対応 自治体にばらつき
混乱の一因は自治体による修理対応のばらつきだ。GIGAスクール構想を進める国は端末の調達費用は補助するが、付属品や保険は各自治体の裁量。その結果、配備の早さを重視して端末を購入した自治体と、アフターケアも含めて充実したリース契約を結んだ自治体とに二分された。 端末を購入した愛知県岡崎市は、学校敷地内の破損は全て市教委加入の保険でカバーする。保険料は一台につき年三百円。補償範囲を校内に限定したため格安で契約できた。一方、敷地外は保険加入も含めて保護者負担。市教委の担当者は「全て補償すると間違ったメッセージになる。リスクを自覚し、大切に使ってほしい」と話す。保護者にも児童生徒にも十分にリスクを説明しており、今のところトラブルはないという。 学校敷地外も含めて修理費用を負担する自治体もある。滋賀県草津市は故意の破損や重大な過失以外は市が負担。保険には入らず、壊れるたびに実費負担する予算を確保した。小学校用の端末には堅固な保護カバーが付属しており、配備が始まった昨年九月以降で画面割れは数件にとどまる。 一方、岐阜市や三重県四日市市は修理費用も含むリース契約。あらゆるケースで補償が適用される岐阜市の担当者は「画面割れは予想以上に起きているが、保護者とお金でもめないことが最も大事」と強調した。 いずれの教委担当者、現場教員に共通したのは「壊すことを恐れて使わないのでは本末転倒だ」という意見だった。 ◇GIGAスクール構想を巡るトラブルや課題について情報やご意見をユースク取材班にお寄せください。関連キーワード
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