• 09/11/2022
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「しない経営」「データ経営」で4000億円の空白市場を切り開いたワークマンのマーケティング手法

「普及価格×機能性」のアウトドア・スポーツウェア市場は4000億円の空白市場と言われている。その市場を切り開き、躍進を遂げているのがワークマンだ。市場創造による「客層拡大」を目標に掲げ、達成に向けてデータ経営とワークマン式“しない経営”を推し進めている。

作業服では国内ナンバーワンでありながら新たな市場に進出した理由、作業服を求めるプロ客を維持しながらも一般客を取り込むために講じた改革とマーケティング手法を、『ワークマン式「しない経営」――4000億円の空白市場を切り拓いた秘密』(ダイヤモンド社)の著者で専務取締役の土屋哲雄氏が、経営側として重視すべきポイントを交えて解説する。

「中期業態変革ビジョン」を打ち出し、作業服から新業態へ

ワークマンは2014年、「客層拡大」で新業態へ向かい、「データ経営」で新業態を運営するという「中期業態変革ビジョン」を打ち出した。

国内における作業服市場はまさにブルーオーシャン状態で、ワークマンは長年にわたりナンバーワンの地位に位置している。店舗数や品ぞろえに加え、製品は高機能かつ手頃な価格のため、値引きをしなくても在庫を残さず売り切れるという強みも兼ね備える。多くの強みを持ち、国内の作業服小売業では敵なしの状態にも関わらず、なぜ新たなビジョンを打ち出したのか。

理由の1つは、マーケットの頭打ちが見えたことだ。ワークマンのように、個人向けに作業服を店舗で販売する市場の規模は2000億円以下と考えられており、当時700店舗超で売上高が約700億円だったワークマンが1000億円程度に到達した時点で成長の限界が来るという懸念があった。

そしてもう1つの理由が、大手ネット企業の台頭により小売り店舗が淘汰されつつあったことだ。

こうした背景から、「客層拡大」を図り、作業服市場から新業態へと向かうことをめざすようになる。しかし、作業服に特化してきたワークマンにとって、他分野の知見は決して多くなかった。このため、データでナビゲーションして新業態を運営する「データ経営」を客層拡大の手段として掲げた。

第2のブルーオーシャン市場でもトップを維持するための2つの手段

国内の個人向け作業服市場ではナンバーワン企業のワークマンだが、目標は1位になることではなく、トップの状態を100年続けること。

第2のブルーオーシャン市場として新たに進出したアウトドア・スポーツの分野でもトップになるのは当然で、100年の競争優位が続かなければ撤退する覚悟で事業を推進しているという。

それを達成する手段として、「しない経営」と「データ経営」の2つをあげる。

経営目標の達成手段①「しない経営」

「しない経営」とは、「社員にストレスを与えない」「ワークマンらしくない仕事はしない」「価値を生まない仕事はしない」など、さまざまなところに当てはまる。だが、本質的には「余計なことをしない。仕事を絞って、成果の出る仕事だけをする」ことだと土屋氏は話す。

競争が激しい中では、100の仕事をしても10の成果しか出ない。だからこそ、100の仕事をして100の成果が出せるような、良いポジショニングを取ることが重要だという。

経営目標の達成手段②「データ経営」

ワークマンは、“不確実な時代には、現場に情報がある”と考えている。現在もコロナ禍で人々の行動が大きく変化しているが、この状況下で販売状況や顧客がどう変化しているのかを社内で最もよく知っているのは、加盟店を回っているスーパーバイザーだ。

本部とスーパーバイザーの関係性は、末端からの情報を中央に吸い上げて判断を仰ぐ「クラウド型」ではなく、各現場で頭脳を持って的確に判断し、その結果を本部に上げる「エッジコンピューティング型」と例える。

各店舗の品ぞろえを例に見ると、ワークマン全体で5400アイテムの製品があるが、100坪の店舗には約1800アイテムしか陳列できない。そのため、加盟店を回るスーパーバイザーたちがデータを取り、検証しながら陳列する製品を最適化している。

効果の高かった結果を本部に上げ、その品ぞろえの効果が当てはまる範囲は1店舗だけなのか、エリアなのか、気候区分なのか――などを本部が判断して再度検証し、マニュアルを書き換えている。

「客層拡大」に向けて、企業文化から変える

ワークマンは製品を増やして「客層拡大」を実現したのではなく、製品は同じままでユーザーだけを拡大させている。事業ドメインをかつての「作業服」から「機能性ウエア」に変更。作業服自体が機能性を求められる製品のため、その点は従来からの強みだった。

機能性ウエアで「客層拡大」をする上で、当然マーケティングが必要になる。土屋氏は「マーケティングというのは販売手法であり、会社の考え方そのものが出るところ。だから企業文化から変える必要があった」と話し、これまでの企業文化のうち7割ほどを変え、今後も強みとなる3割の部分はより強化する方針をとった。

ワークマンが「変えた企業文化」のポイント3つ

企業文化を抜本的に改革するため、社員の考えや報酬制度、評価制度など根幹から手を入れる必要があった。その際に重視したのが次の3つのポイントだ。

①「客層拡大」だけに絞った“少ない目標”

目標は完全に「客層拡大」1本に絞り、時間がかかっても必ず達成すると掲げた。その理由は、多くの目標を立ててマイルストーンを置いたり、時間や期限を区切って着手しても、10個ある目標のうち1~2個しか達成できないケースがよく見られるからだ。

目標を1つに絞れば余計な考えや作業が省けるようになる。また、「時間がかかっても良い」とすれば、無駄なストレスがなく、意外に早く推進できるという。

②強みの拡張

フランチャイズ制度で培ってきた標準化や、高機能・低価格商品で顧客に還元するためのローコスト運営など、ワークマンは従来からオペレーションに強みを発揮していた。

この「Operational Excellence」に、他社が5年は追いつけないようなPB製品を開発する「Product Innovation」を追加した。

商品開発部門の人員を従来の4~5倍に増強。新規採用だけでなく、ほかの部署からも人材を投入して、商品開発に集中する体制を構築した。

③経営の“本気度”を見せる

目標達成までの期間を決めてしまうと、期限が来たらリセットしてまた次の目標を打ち立てるという繰り返しになり、目標が期限を守ることにすり替わりかねない。だからこそ、本来の目標を達成するまでやり続ける“本気度”を経営として見せることが重要という。

年収アップに加え、幹部になるための任用条件を従来の「コミュニケーション能力」から「改革マインド」と「データ活用力」に大幅転換した。

また、上場企業の決算早期化が求められているなか、今回の改革の一環として決算発表日を1週間ほど延長した。ワークマンもこれまでは早期発表に取り組んできたが、残業時間削減と働き方改革のために断念した。1つの重要な目標「決算早期化」をあきらめ、もっと重要な目標である「働き方改革」に集中することにより、経営の本気度を見せた。

ワークマンが「強化した企業文化」のポイント2つ

企業文化の7割を変えた一方で、創業以来培ってきた強みとなる企業文化はより強化している。

「しない経営」「データ経営」で4000億円の空白市場を切り開いたワークマンのマーケティング手法

①顧客、供給先、加盟店の“固定化”

高機能製品を低価格で販売するワークマンにとって、顧客が値札を見ずに買う状況こそが顧客からの信頼の表れであり、固定化につながっている証拠と言える。

長年ワークマンを愛用している作業服の顧客のほとんどは、手頃な価格だとわかっているため値札を見ずに購入しているという。「客層拡大」で新たにワークマン製品を手にした作業服以外の顧客にも、値札を見ずに買うような“固定化”を推し進めている。

また、供給先のメーカーは創業以来変えておらず、加盟店も6年ごとの契約更新時期に99%が更新するという高い水準を維持。それだけでなく、加盟店の約半数が子どもや関係者に引き継いで、ワークマンを家業として続けているという。供給先と加盟店との関係性もますます強化したい考えだ。

②「しない経営」

ワークマンは、余計なことをせず、仕事を絞って、成果の出る仕事だけをする「しない経営」を今まで以上に追求している。

大手ネット企業が台頭しても100年の競争優位を維持する3つの方針

Amazonの業容拡大により大打撃を受ける企業が現れ、国内にも懸念が生じた小売事業者は少なからずいるだろう。しかし、全国に900以上の実店舗を持つワークマンは、ほぼ脅威に感じていないという。

その証拠として、大手コンビニエンスストアがすぐ近くで手に取って買える利便性を提供し、食事を温めたりイートインスペースを設けるなどして、ネット販売ではできないことを実店舗で実現していることをあげた。

大手ネット企業が台頭してもワークマンが100年の競争優位を維持するために、①定価で負けない②配送費がかからない店舗受け取り③販促費をかけない――の3つの方針を掲げた。

価格で負けない

現在の市場は付加価値を追い求める傾向にあり、その背景からワン・トゥ・ワンマーケティングに奔走する企業も多い。付加価値ももちろん重要だが、「本来ユーザーは製品を購入しているのだから、まずは価格で負けてはいけない」というのがワークマンの考えだ。

手頃な定価を実現するには、ボリュームを多く製造した上で売り切ることが必要となる。しかし、仮に安く大量生産した製品をグローバルに展開するとしても、アパレルは国や地域ごとに好まれるテイストが異なる点が難しい。ワークマンは国内のニーズを捉え、数十万単位で製造した製品を国内で売り切るため、巨大グローバル企業にも負けない競争優位を実現している。

配送費がかからない店舗受け取り

Amazonをはじめ、さまざまなネット通販が「ラストワンマイル」を強化している中、宅配便で個別に商品を配送する方法では、激しい競争の中に飲み込まれてしまう。これを避けるため、近い将来、個別配送を廃止し、クリック&コレクト(店舗受け取り)だけにシフトしていく。

ワークマンは価格と品質で顧客に還元するため、従来から売上総利益率を36%以上取らないような体質にしているが、ネット通販の中でも特に返品率が高い衣料品で個別宅配に対応していると、余計に利益を圧迫してしまう。現状、ワークマンでも宅配のうち5%が返品されているという。

また、機能性ウエアはサイズの確認だけでなく、触ったり着用して確認したいというニーズが高いため、現物を手に取る機会を設けることは重要だ。

100坪の実店舗には限られた数の製品しか置けなくても、全製品をネットで注文できるようにして、店舗で受け取る際にサイズや機能を確認できれば、顧客は安心して持ち帰ることができる。もしサイズが合わなくても、その場で店舗在庫との交換や再度注文ができるため、個別配送にかかる返品処理が削減できるようになる。

販促費をかけない

Amazonは販促費なしでも売れるので、ワークマンは広告費ゼロをめざす。スポットのテレビ広告は続けながらも、番組提供は打ち切った。その代わり、最近ではSNSの評判で売り切るための「アンバサダーマーケティング」の仕掛け作りに努めている。

国内にあった4000億円の空白市場

下の図は、アンゾフの市場成長マトリックスにワークマンが実施する客層拡大路線を当てはめたものだ。

左下の「①市場深耕」のところで40年間作業服の市場を深掘りし、業界ナンバーワンの地位を維持してきたが、若年層の作業服顧客向けにスタイリッシュな作業服を展開して「②製品拡張」にも踏み出した。さらに、②でラインナップしたスタイリッシュな作業服を「機能性ウエア」と定義したことで「③客層拡大」につながり、高機能かつ低価格なアウトドア・スポーツ市場を獲得したという流れだ。

客層拡大路線に乗り出す以前に実施した市場調査では、「アウトドア・スポーツ市場には高級ブランドと普及ブランドしかなく、ワークマンが進出しても購入の対象外となるため10年かけてブランドを作らなければならない」という結果が出たという。

しかし、実際は違っていた。アパレル市場を見ると、機能性×高価格のゾーンは競争が激しくブランド力が必要だが、機能性×普及価格のゾーンは4000億円の空白市場だった。

ワークマンは2018年に、アウトドア向けの店舗として「ワークマンプラス」の1号店を出店。従来の「ワークマン」と同じ製品でも、照明の変更や上下セットアップの陳列などで見せ方を変える「空間戦略」により一般客が増加した。新規店舗の出店や既存店舗のリニューアルで店舗数を拡大し続けている。

「ワークマンプラス」のアパレル業界に対する優位性

作業服を原点に持つ「ワークマンプラス」は、アパレル業界に対して①低価格②継続製品③共通製品――の3点で優位になると捉えている。

作業服は仕事で使うため、高価格ではなかなか売れない。もともと低価格を実現しているワークマンは、これまで通りの製品でも一般客向けに販売すると価格面で大きなインパクトを与えられる。

また、アパレルは流行を追わなければならない一方、作業服は一度企業に採用されると数年間使い続けられる“継続製品”のため、多少の変更はあっても平均10年間は同じ製品を作り続ける。製品を廃棄せずに翌年も定価で販売でき、アパレル業界が廃棄問題を抱える一方で、ワークマンは従来から環境に優しい製造販売サイクルになっている。

PB製品も5年間作り続けることを考慮して、1年目はリスクを避けて少なめに生産し、2年目以降は需要予測に基づき売り切る数を生産する。この需要予測と生産数に、データ経営が生かされている。

3点目の“共通製品”は、作業服顧客と一般客に向けて同じ製品が販売できることや、性別を問わないユニセックス製品が多いことを指す。1つの製品に対する顧客層の広さが特徴だ。

「客層拡大」に奏功したワークマンのマーケティング手法

ワークマンの経営目標は「客層拡大」と、その結果として「100年の競争優位」を確立すること。そして、この目標を達成する手段は「しない経営」と「データ経営」だ。これをマーケティングに当てはめると、下の図のようになる。

マーケティングの比重は、「製品開発」が6割、従来型店舗から見せ方を変えた「新型店舗」が2割、「SNS販促」が2割とし、それらを「しない経営」と「データ経営」で実行している。

SNS販促に欠かせない「アンバサダーマーケティング」

販促をアンバサダーマーケティングにシフトし、現在は約30人のアンバサダーと協業。ワークマン製品のファンであり、アウトドア、ドライブ、釣りなど、各分野に精通したインフルエンサーをアンバサダーとしてリクルートしている。

コマーシャルの関係を持つとアンバサダーが発信する情報が信じられなくなるため、広告費は一切渡していない。その代わり、アンバサダーへのアクセスを増やすための施策に徹し、Win-Winの関係を築いている。

番組提供を打ち切りながらもスポットのテレビCMを放送したのは、アンバサダーへのアクセスを増やす施策の一環だった。

アンバサダーは製品開発に参画し、開発に携わった製品についてはワークマンのリリースより先行して情報を発信するようにしている。この取り組みがアクセス数の伸びに大きく影響している。

下の図のように、アウトドア分野のアンバサダーが日頃「旅行」をテーマに投稿しているYouTubeの動画再生回数が1.4万回であるのに対し、ワークマン製品を取り上げた投稿では2.14倍の3万回に達している。

再生回数の増加に伴いYouTubeの広告収入も増え、アンバサダーに還元される仕組みだ。アンバサダーの中には年間10本以上のテレビに露出した人も現れている。

アンバサダーが製品開発に参画すると意外なニーズに気付くことが多く、実際に販売した製品の売れ行きも好調だという。

参加費以上の効果が出た「東京ガールズコレクション」

「ワークマンプラス」に次いで立ち上げた「#ワークマン女子」は、2021年の「東京ガールズコレクション(TGC)」に参加した。目的は、TGCのメインターゲット層であるF1世代からの購買促進ではない。家庭内でワークマン製品が着られるようになり、F1層の親世代が普段着として着用しても、アパレルとして違和感を覚えないようにするためだ。

イメージ作りを重視した上での参加だったが、数十万~数百万人のフォロワーを持つモデルたちがワークマン製品を着用してTGCのようすをSNSに投稿したほか、意外性から多くのメディアに取り上げられ、参加費の10倍の効果が出る結果となった。

「#ワークマン女子」から見る、SNSだけで集客ができる理由

「#ワークマン女子」は、コレットマーレ店(横浜市桜木町)、東京ソラマチ店、なんばCITY店だけの出店予定だったが、あまりの人気から店舗数が拡大している。SNSとリアル店舗をつなげる「Connected Store」と位置づけ、次のようなSNS循環による集客を狙っている。

アンバサダーが企画・発信↓アンバサダーのSNSを見た顧客が来店↓来店した顧客が発信↓さらに新規の顧客が来店

こうしたSNS循環型店舗とするため、ピンクのブランコや「ゆるキャラ」を作り店舗内にはフォトスポットも多数設置した。

“バズる”条件は投稿率

東京大学経済学部・片平ゼミの調査によると、「観光地(鎌倉)のおしゃれな飲食店×リピーターなし」の条件では、来店した顧客のうち14~26%がSNSに投稿すると行列ができ、「郊外のおしゃれな飲食店×リピーターあり」の条件では、2.6%が投稿すると行列ができるという。

2020年10月に開店した横浜市桜木町の「#ワークマン女子」1号店は、来店後に「投稿したい」という顧客が12%おり、仮にそのうちの半数が投稿すれば投稿率は6%に達する。リピーターありの店舗のため、この投稿率は非常に高いと考えられ、今もなお行列が絶えない理由と推察される。また、店名に「#(ハッシュタグ)」を付けたことにより、開店から半年で2万5000件を超える自然投稿が行われている状況だ。

時間帯で「ワークマン」から「ワークマンプラス」に変身

作業服を求めるプロ客が来店する朝と夕方は「ワークマン」に、一般客が来店する日中は「ワークマンプラス」に変身する店舗が登場している。

時間帯で看板を変えるほか、店舗内も壁に装飾したパネルを朝夕は窓拭きの作業員の写真に、日中はボルダリングの写真に変身するなど、照明、マネキン、音楽、香りまでを変えるセンサリーマーケティング(五感に訴えるマーケティング)を実践。製品は同じでも、来店する客層に合わせて店が変化することで、一般客の増加と作業服を求めるプロ客の離反防止に大きな効果が出ているという。

パブリシティはストーリー性が重要

メディアで取り上げられるためには、単に情報を発信するのではなく、メディアがストーリーを作りやすくするための工夫が必要だという。衣食住の分野は取り上げられやすい反面、ストーリー性がなければ際立たず、一時的な話題になりやすいイベントより恒久施設である店舗の方が報道しやすいと分析する。

そこで、ワークマンはストーリー性を作るため、「ワークマンプラス」が関西に進出する際に、同じタイミングで関西に日本1号店を開店するフランス発の大手スポーツ用品店「デカトロン」を仮想のライバルとして設定した。

このニュースリリースが注目を集めて多数のメディアに取り上げられ、2019年に日経トレンディが発表したヒット予測では両社が1位となり、翌年にはワークマンが単独で1位となった。

マーケティングの成果でテレビ露出No.1、ブランド価値521億円に

関東キー局における2020年1月1日~11月20までの露出回数・時間を集計したところ、ワークマンは企業のなかでトップの6時間27分となり、媒体換算では44億4000万円にも達することがわかった(同社調べ)。

第三者機関からの評価も向上した。日経BPコンサルティングのブランド価値評価プロジェクト「ブランド・ジャパン2021」では、一般生活者による評価が前年の151位から23位に大幅アップし、上昇ランキングでは1位となった。

また、国際的なブランディング専門会社のインターブランドが発表した「Best Japan Brands2021」では、ワークマンのブランド価値は前年比57%増の4億7400万USドル、日本円で521億円となった。1年で188億円もブランド価値が増加したことになる。

“100年”を見据えた企業理念

経営が本気度を見せるためには、発言内容とやることが100%一致していなければならない。目標と達成手段に根ざして、ワークマンは次のような企業理念を打ち立てている。

競合が現れるから儲かることはやらない。低価格でありながら、なまくらなものは1点たりとも作らず、値札を見ずに買ってもらえるような信頼を築く。そのために、社員には利益管理やノルマの設定はしない――。

顧客、加盟店、供給先メーカーとの長期にわたる関係を重視した企業理念で、100年という長い将来を見据えている。

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